武内 理(A-big Motorrad 店長)
- 掲載日/2008年06月10日【インタビュー】
定休日を使って主催する
プライベートツーリング
今回紹介するのは、東京・府中にある正規ディーラー、A-big Motorradの店長、武内 理さん。A-big Motorradでは、土曜日・日曜日を中心に年に数回主催しているお店のツーリングのほかに、定休日の水曜日に武内さんが主催する日帰りのショートツーリングがある。自ら「水曜倶楽部」と名付けたこのツーリングは、お店の公式なものではない。武内さんの人柄を慕って集まった少人数のお客さんとのプライベートツーリングだ。また、最近では武内さん以外はすべて女性という「女性だけの水曜倶楽部」なる、男性ライダーからするとうらやましい限りの企画もあるという。しかしそこには、安全に速く楽しく走れる乗り方をアドバイスすることで、もっと女性にBMWの素晴らしさを感じて欲しいという思いがあった。そんな武内さんに、ツーリングに対する思いを伺ってみた。
女性ビギナーのために
走り方のノウハウを提供
武内●本当はお客さんの都合を考えると土日にツーリングイベントをやりたいのですが、土日は商売をする日なのでなかなか頻繁にはできません。でも、水曜日なら定休日なので、商売とは関係なく私自身は自由に動けます。そこで、私と一緒に走ってみたいと思う人がいるのであれば、ということで始めたのが「水曜倶楽部」です。「”土日は商売の日、水曜日は走る日”。タダだからいらっしゃいよ」という感じですね。
武内●もともとは、綿密な計画もなしに「今度の水曜日にツーリングに行くので、7時ごろ談合坂のサービスエリアに来れば一緒に走れますよ」という軽い企画でした。あくまでも私自身がプライベートなツーリングをするので「来たい人は来れば?」という感覚です。でも、そんなことを続けているうちに、「今度はいつ水曜倶楽部やるの?」というお客さんからの要望も増えてきました。それで、「水曜倶楽部」と銘打ち、お客さんに告知して実施するようになったのです。
武内●事前に告知するようになると、BMW新規ユーザーの参加も増えてきます。常連の方は走り込んでいるからいいのですが、慣れていない方には教えてあげなければならない。それは、お店の義務というより私ができるサービスなのかな、と思います。こうすれば楽に速く走れるとか、こうすれば楽しく安全に走れる、という部分はいくら教えてあげても損しないでしょう? だから自分が教えてあげられることは全部教えてあげるようにしています。
武内●「女性だけの水曜倶楽部」は、昨年あたりから始めたことです。水曜倶楽部の参加者で記念写真を撮ったら、女性の方々と私だけ写っていたということがありました。たまたまその時は女性参加者が多かっただけなのですが、それをきっかけに「今度は女性だけを集めて水曜倶楽部をしようよ」という話が盛り上がり、始めることになったわけです。
武内●男性のお客さんはつわもの揃いなのでいいのですが、大きなオートバイに乗り始めたばかりの女性や、初めてBMWを選んでくれた女性には、いかにBMWで走ることが楽しいか、という部分を教えてあげなければならないと思ったのです。
武内●オートバイの扱い方や乗り方の中には、あらかじめ知っておかないとできないことがたくさんあります。水曜倶楽部で私のすぐ後ろにぴったり付いてくる方と、どうしても離れてしまう方に分かれてしまう。でも、付いてこられない方に能力がなかったりヘタだったりするわけではありません。ただ、乗り方を知らないだけ。そこで私がアドバイスすることで、速く走れるようにしてあげたいと思ったのです。こういう走り方をすることでもっと楽に走れる、ということを自分が教えられる範囲で全部教えちゃう。その結果として、A-bigにもっと女性ユーザーが増えれば、私たちとしても嬉しい限りです。
武内●私は先頭を走っていますが、常にバックミラーを見ていて、後ろを走る方々の動きがよくわかります。「なぜ、あの人は遅いのかな」、「どうしてあの人はコーナーで見えなくなるのかな」と、後ろの女性をよく観察しています。それで、休憩を利用して、その人それぞれにどうやったら速く走れるかをアドバイスするわけです。5~6人程度のツーリングだと、ひとりひとりに細かいアドバイスができますから。また、参加者の皆さんからも、あの人はこうだよ、ああだよ、という話をしていただくので、私からそれぞれの方に自分の言葉でアドバイスしたりもします。
武内●確かにこういったことはライダートレーニングに行けば学ぶことができます。でもライダートレーニングにはお金もかかるし時間にも制約があります。そこで、そのエッセンスの部分だけちょっともらって、自分が20年以上大型バイクに乗ってきた経験も加えて、私なりにお教えしているわけです。とくにA-bigで初めてオートバイを買ったお客さんには、必ずお教えしてするようにしています。
武内●オートバイが楽しい乗り物でいてくれないと、私たちの商売が続いていきません。無理して付いてこなくてもいいので、楽しさだけ味わって帰ってくれればいいなぁ、と思っています。ツーリングを主催してバイクを買ってもらおうと思っているのではなくて、買ってくれた人たちがバイクを嫌いにならないように、楽しくなる乗り方をお教えしなければならないと思っています。売るためのツーリングもあるかもしれませんが、買った人に乗り続けてもらうツーリングも重要だと思いますよ(笑)。
ヨーロッパをBMWで走ると
帰国後BMWに乗りたくなる!?
武内●A-bigのヨーロッパツーリングは、2、3年に一度、BMWのふるさとであるミュンヘンを中心に、そのときどきの新型のBMWで、ドイツ、オーストリア、イタリアなどを回ります。すでに過去4回実施していて、一昨年にはフランス周遊ツアーも主催しました。
武内●もともとは、アライモータースがBMWディーラーになった1993年、当時まだ10人くらいしかいなかった常連のお客さんたちと、「いつか自分達のBMWが生まれた国を走ってみたいと思わない?」という話で盛り上がったところから始まりました。ですから、きっかけは私ではなくお客さんです。その話に私も、面白そうだな、行ってみたいな、と思ったのが始まりですね。
武内●BMWディーラーを始めたばかりの頃、毎月の定例ツーリングを実施すれば毎月1台売れるという感じでした。それがヨーロッパツーリングとなると、帰国後に参加者の皆さんがBMWを買ってくれる。あのパワーはすごいと思いました。それで味をしめて、数年に一回はヨーロッパツーリングをやるようになりました(笑)。
武内●ヨーロッパに行くと、バイクで道を走っていなくても、その文化の違いが感じられますよね。街中に自動販売機がなかったり、コンビニがなかったり。それがツーリングとなるともっと劇的です。例えば、 宿は山深いペンションに泊まることが多いのですが、そこで朝目が覚めたときに牛乳缶を積んだ荷車をロバが引く姿などを目の当たりにするわけです。日本なら30年以上前の風景ですよね。これはもう、ヨーロッパだからこそ見られる景色であり、文化の違いだと実感しました。
武内●BMWは、日本とはまったく違う次元で設計されていると感じました。やはり、一般道を時速100km、アウトバーンを時速130km以上という速度基準の中で作られているオートバイなのだと痛感します。例をあげれば、ギア比のセッティングやエンジンのトルク感などが、向こうの速度で走ったときに心地良いようにできているわけです。
武内●ヨーロッパツーリングに参加してバイクの素性を知ると、みんな走りに開眼してしまうのです。日本に帰ってきて一緒に走ると「みんなどうしちゃったの! そんなに速くなって!」といつも思います。日本では体験できない環境で走ることで、速く走る方法を覚えて帰ってくる人が多いようです。BMW本来の乗り方というのは、ヨーロッパに行かないと実践できない部分があるのでしょう。
武内●今年は11月19日から26日まで、スペイン・ポルトガルツーリングを企画しています。同時多発テロ事件の直後は海外旅行というものに対する風当たりが強かったり、最近ではユーロ高で費用が高騰したりで、だんだん企画が難しくなってきています。でも、言い出したのは私たちですから、行きたいという人が一人でもいれば、参加者を集めてやらなければならないかな、と責任を感じています。
株式会社アライモータース A-big Motorrad
Interviewer Column
初対面ではちょっと強面な印象を受ける武内店長だが、いったん打ち解けると人懐っこい笑顔を見せてくれる。それが、A-big Motorradのお客さん、なかでも女性のお客さんに人気の秘密なのかもしれない。完全に女性だけのツーリングは他のディーラーやツーリングクラブでも行われているようだが、「女性だけの水曜倶楽部」のように、男性一は人であとは女性ばかりというツーリングは、あまり聞いたことがない。今回は、武内店長と女性だけのツーリングということで、息を潜めて影武者のように同行させていただいた。そのなかで、やはりこうしたツーリングは、武内店長の人柄にお客さんたちが集まってくるんだなぁと感じた。(八百山ゆーすけ)
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野崎 正博(AMC Tokyo 店長)
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