K1200RS(1997-)
- 掲載日/2010年02月26日【試乗インプレ】
- 写真/山下 剛 文/小松 男、山下 剛
この記事はBMW BIKES Vol.47掲載の記事を再編集したものです
BMW Motorrad K1200RS
縦Kエンジン搭載のハイスピードモデル
K1200RS
1983年、BMW モトラッド史上初となるマルチエンジンを搭載したKシリーズで、先陣を切って発表された K100 に続き、同年発表された K100RS。縦置きクランクシャフトエンジンは、日本の4気筒モデルとは明らかに違う感触を持ち、高速クルージング性能の高さには、その思想の違いが明白となるモデルだった。そもそも BMW モトラッドの市販モデルでの『RS(レン・シュポルト)』というイニシャルは、量産バイク初のフルフェアリングを装備した R100RS から始まる。その名前には「純粋なるスポーツ」的な意味がこめられ、BMW のトップスポーツモデルにのみ与えられる称号だった。Rシリーズでは後のオイルドヘッドエンジンモデル R1100RS へ、そしてKシリーズでは K1100RS を経て1997年に K1200RS が登場する形で、このイニシャルが継承されていくこととなった。
それまでのスクエアライクなデザインから一変し、丸みを帯びグラマラスなスタイリングとなった K1200RS は、それまで BMW が自主規制してきた100馬力の壁を軽く突破するもので(欧州仕様は100馬力)、日本に上陸したモデルは130馬力ものパワーを持つものだった。しかもそれはただ単に出力が上がっただけではない。BMW モトラッド初のアルミ製ツインスパーフレームを採用し、十分な剛性を確保したうえで、R1100系で成功していたテレレバーをフロント回りに奢った。これにより格段にスタビリティが引き上げられた K1200RS は、本国ドイツのアウトバーンで時速200キロオーバーのスピードで、巡航することが可能な作りこみをしてきたのだ。もちろんそのような速度域からの急減速に備えて ABS も装備している。
今回ピックアップした K1200RS は 2001年に発表された、いわゆる後期型である。一見するとスタイリングには変更箇所が見当たらないように思えるが、アッパーフェアリングの形状、スクリーンの面積、ハンドルの高さなどが外見からわかる変更箇所だ。メカニズム的な面では、パーシャリー・インテグラル ABS が標準装備されたことと、全長で 35mm、ホイールベースで9mm短縮されたこと、そして各減速比の見直しによって、より加速をスムーズに高速巡航を快適にデチューンしている。
残念なことに、この K1200RS を最後に、Rシリーズ、Kシリーズともに、RSの系譜は途絶えている。現在横置きクランクシャフトエンジンとなったKシリーズでは、車輌のキャラクターをハイスピードクルーズとロングツーリングにわけ、Sと GT という2モデルの形となっているわけだが、この縦置きエンジンを搭載した最後の RS の乗り味とは異なる。独特な世界を持つ RS というモデルのことは、これから先も長く語り継がれてゆくことだろう。
K1200RSの詳細
編集部インプレッション
最初の縦置きから最後の縦置きまでの進化 ●小松 男(BMW BIKES 編集部)
今回試乗した K1200RS の前期モデルにあるイエローチェッカーモデル。あのバイクが登場したときは BMW のデザインセンスがそれまでのモデルから大幅に変わったことに驚いたことと同時に、妙に惹かれて今でも頭の片隅に残るモデルとなっている。
K100LT という、あの角ばった、ある意味古めかしいデザインのバイクを所有し、それを好んで毎日乗り回す生活を送っている人間がこう書くのもなんだが、今よりも若かりし頃は、K1100系までのあのスタイリングには好意を抱いていなかった。どちらかというと苦手だったと言う方が正しいだろう。だからこそ逆に、この K1200RS の登場により、Kシリーズに興味を持てたわけでもある。そんな個人的エピソードを持つこの K1200RS というバイク、実際に乗ってみてどうだったかというと…。
?車重 283kg という、縦置き2バルブエンジンモデルの中では最重量級の K100LT に慣れている自分だが、この K1200RS はさらにその上をいく 290kg の超重量級バイク、やはり取り回しはそれなりに緊張する。テレレバーと言うことで、テレスコピックフォークよりも反応が遠く感じたこともその要因かもしれない。しかし、傍から眺めるよりもシートが低く、コンパクトなので、またがってしまえば安心感がある。エンジンのフィーリングは縦置きレイアウトらしい、非常に密度の高い吹け上がり。国産マルチの軽い吹け上がりを想像していると驚くことは間違いない。しかしだ、これが速くて疲れない秘密なのである。軽い吹けあがり、シビアなレスポンス、挙動が大きい、と言った長時間乗っていると疲労として跳ね返ってくる要素と、まったく逆のことがこの K1200RS では起こっている。ただし、それは決して “遅い” や “だるい” わけではない。その乗り心地はこれぞスペシャリティバイクと言う高級感として感じ取ることが出来るのだ。キャンキャン吼えるのではなく、じっくりと見定めて、一気に仕事に取り掛かる猟犬のような存在だ。それと今回乗った車輌は、オーナーが K1200GT タイプのスポイラーをアッパーフェアリングに装着していたため、走行風もだいぶ防がれていた。
身を任せたくなる性質の安心感 ●山下 剛(BMW BIKES 編集部)
私の机にはバイクの模型が置かれている。何を隠そう(いや、隠すつもりはまったくないけど)、それが K1200RS である。縦Kシリーズに共通する「ちょっと昔の近未来イメージ」のようなデザインとは一線を画す、丸みを帯びてふっくらした線と面が好きで、毎日見ていても飽きない。とくに“ふっくら”しているところが気に入っているのだ。もちろんそれは実車を見ても変わらない印象で、その乗り味を想像すると「包まれているような安心感」の中で、それでも非現実的なペースで高速道路をワープしてくれる…それが K1200RS への期待だった。
果たして今回、試乗する機会を得た。残念ながら高速道路をズバーと走ることは出来なかったが、峠道を走っただけでもその片鱗を感じることが出来た。それは “ドッシリ” と表現したくなるほどの大きな安心感だった。想像通りと言えばそうだが、正直にいえば想像以上だった。逆に言うと、それは「重い」とひと言で済ませてしまいそうになるのだが、それでは片づけられない何かが潜んでいる。
たとえばUターンだ。大の男をして「倒したら起こせないかも…」と思わせる重さは、転倒に対する恐怖を倍にする。しかし走っていたときに感じていた安心感を思い出し、そこに身を任せてしまえば、K1200RS はスッと身を翻してターンしてくれる。まあ、これはどのバイクでも言えることかもしれないが、K1200RS のそれはとても頼もしく、大きなものだ。キカイコーガク的に言えば低重心化が効いているということなのかもしれないが、そのへん私にはよくわからないので、あえて抽象的に表現すると、K1200RS の安心感は母性的なのだ。身を任せたくなる性質の安心感があるのだ。
それはボディラインに違わぬむっちり、ねっとりとしたエンジンの回り方もそうで、出来ることなら K1200RS にすっかりと身をゆだねてしまい、眠りながら走りたいほどである。K1200RS は疲れたときにこそ乗りたいバイクであるなあ。
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