真剣にレースを戦うだけでなく、互いを尊重し合い、またサービス精神も旺盛。カメラを向けるとこんなサービスも。
カスタム&レースの図式を浸透させた
ドイツのイベント「Glemseck101」
「Glemseck101/グレムセック」は、毎年9月初旬(今年は9月1~3日の3日間)、ドイツ南西部/シュツットガルトからクルマで30分ほどの距離にあるレオンベルグの街の一画で開催されるイベント。その中心となるコンテンツが、0-200mのドラッグレース(彼らは1/8マイルのスプリントレースという)だ。排気量や年代などによって区別された、じつに個性豊かなカスタムバイクによって争われるドラッグレースは、アメリカや日本で開催されている、いわゆる“ドラッグレース”とは違っている。一見不利に見えるようなエンジン形式やフレーム型式のマシンを、ヨーロッパ中から集まったビルダーたちが、思い入れたっぷりに造り込み、そんなマシン同士のバトルだからこそ、見るモノの心を熱くする。そんなレースというか、ビルダーやライダーたちの人生が垣間見えるイベントだからこそ、「グレムセック101」は欧州を代表するイベントへと成長したのだ。
BMW Motorradはそんなイベントを、スポンサーとしてずっと支えてきた。2年前には“R nineTカスタムプロジェクト・ジャパン”で発表された4台のカスタムマシンを、日本人ビルダーを招待して走らせた。また昨年・今年と「BMW BOXER 4Valves Sprint/4バルブ・ボクサーによるレース」を開催。そこにはBMW本社の依頼で「R nineTスクランブラー」をカスタムした日本のカスタムファクトリー/平和モーターサイクルの木村健吾氏も参加した。
イベントが開催された場所は、かつてF1やWGPの西ドイツGPが開催された公道サーキット/ソリチュードの一画だ。ドラッグレース会場の手前には、国産4メーカーや欧州メーカー、用品メーカーなどのスポンサーブースやカスタムショップブースが多数並び、そこでバイクカルチャーのいまを感じることができるのも「グレムセック101」の人気の秘訣なのだ。約5万人が集まるのも、頷ける。
Kraftstoffschmiedeのフィリップが造り上げた、オリジナルフレームのBMWスプリントレーサー。
R100RSを駆り、一度旅に出ると45日間は旅をし続けるというルールを決め、世界中を旅しているラルフ。彼がこのレースの為に持ち込んだのは、エアヘッドの2バルブフラッツツインにスーパーチャージャーをセットアップしたスペシャルレーサー。
スイスのカスタムファクトリー/VTR Customのダニはスイス警察が白バイ用に採用したR80RTをベースにスーパーチャージャーをセット。
BMWE本社からの依頼で「R nineTスクランブラー」をカスタムした広島・平和モーターサイクルの木村健吾氏(右)とBMW Motorradで「R nineT」プロジェクトを進めるオラ・ステネガルド氏。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したアメリー。彼女はなんとBMW Motorradの社員だ。マシンはVTR Customsがカスタムした水冷のR1200R。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したノーベルト・レッブホルツ。R nineTスクランブラーの開発プロジェクトリーダーだ。マシンはR nineT RacerにHP2エンジンを積んだスペシャル。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したジュゼッペ。彼はイタリアのカスタム雑誌/LowrideやChop And Rollの編集長。彼が、イタリアのカスタムビルダーと組み上げたR nineTカスタムで参戦。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したイェンツ。ドイツのカスタムファクトリー/JvB Motoのボスだ。彼が製作したR nineTスクランブラーのカスタムマシンで参戦。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したリナ。彼女はTVタレントだが、四輪でラリーなどにも参戦している。今回はNAGEL MOTORSがカスタムしたスノーヒルクライムマシン“ハスキースクランブラー”で参戦した。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したジョーイ。アメリカ在住のバイクフリーク。BMW Motorradのブランドアンバサダーで、BMW Motorradの広告ビジュアルにも登場する。マシンはR nineTスクランブラー。
「BMW BOXER 4Valves Sprint」に参加したネイト・カーン。アメリカでR nineTのレーシングマシンでレース参戦するほか、BMW Motorradのブランドアンバサダーとしてライディングスクールなども開催している。マシンはBMW Motorrad純正カスタムプロジェクト/SPEZIALの試作品パーツを組み込んだR nineT Racer。
KRAUT MOTORSが製作したBMWのEVスクーター/C Evolutionをベースにしたカスタムマシン。マシンを駆るのはビルダーのラルフ。モーター周りや駆動系などはスタンダードのままだという。
Kingston Custom Motorcycleが製作した“White Phantom”は、スーパーチャージャーをセットしたR80RT用エンジンをオリジナルフレームに搭載したスペシャルマシンだ。
ネイト・カーンが駆る“R nineT Racer Carbon”。R nineT RacerにHP2エンジンを搭載したスペシャルマシンで、最新マシンがエントリーした“ESSENZA”クラスで優勝を果たした。
今年はホンダヨーロッパがF・スペンサー(左)を、ドイツ・スズキがK・シュワンツ(右)を招待。最新型のCBR1000RRとGSX-R1000を駆り、エキシビションレースも開催された。
近年欧州ではKシリーズがカスタムベース車として人気だ。
会場を歩けば、来場者が乗り付けた車両を含め、数多くのBMWやBMW関連アイテムを見ることができる。
グレムセックで人気が高まった0-200mスプリントレースの一つのカテゴリーは“Sultans of Sprint”と題し、ヨーロッパのカスタムバイクイベントを巡る選手権へと発展した。今年のグレムセックはその最終戦。“Sultans of Sprint”のテントブースはエントリー車両が並べられ、そこには常にヒトで溢れていた。
“Sultans of Sprint”の対戦は、その日の朝に抽選で決まる。その抽選風景も、しっかりショーアップされている。
St Brooklyn Motorcyclesが製作したスプリントレーサー。R’sフォークを持つR5用フレームをベースに、R100ベースのエンジンをチューニングして搭載する。
Schlachtwerkが製作したヤマハTR1ベースのスプリントレーサー。欧州におけるスプリントレース人気を牽引してきたマシンとショップだ。
“Sultans of Sprint”の主催者でありスプリントレース人気を牽引してきたLucky Cat Garage。ライダーはLucky Cat Garageの主催者/セバスチャンのパートナーで、フランス・ビンテージバイクシーンを牽引してきたショップ/アトリエ・シャトキンのローレンス・シャトキン。
BMWのEVスクーター/C Evolutionをベースにしたカスタムマシンを製作したKRAUT MOTORSのラルフはR5ベースのスプリントレーサーも持ち込んでいた。
これもスプリントレースに出場していたマシン。シンプルだがスタイリッシュ。デロルト製キャブを装着していた。
“Sultans of Sprint”の2017年シリーズ表彰式。