VIRGIN BMW | 防水透湿素材「D-Dry」から見えてくるダイネーゼの研究開発能力 特集記事&最新情報

防水透湿素材「D-Dry」から見えてくるダイネーゼの研究開発能力
掲載日/2017年4月28日
エアバッグを筆頭とする革新的な技術を次々に製品化するダイネーゼ。その技術レベルはNASAとコラボレーションを行うほど高度なものだ。今回は同社自社開発の防水透湿素材であるD-Dryにフォーカスしつつ、彼らの持つ技術の幅広さに迫ってみたい。

ダイネーゼの一部ウエアで使用されているDドライ(D-Dry)という素材をご存じだろうか? この素材は、同社のジャケットやパンツ、グローブでも使用されている防水透湿素材の名称だ。Dドライは製品の生地に挟まれている厚さ1mmにも満たない薄いフィルムだが、耐水圧1万mmH2O以上を誇る超ハイテク素材だ。

耐水圧とは、生地の上に1平方cm四方の柱を立てて、柱の内部に水を入れていった場合に、水の高さが何mmになったら水が浸み出すかを表す指数。仮に耐水圧1万mmH2Oならば、水柱の高さが10mでも水は浸み出さないということ。ダイネーゼは耐水圧を確実に保証できる「最低値」として1万mmH2Oを公称しているが、テスト環境では2万mmH2Oの防水力を発揮しているという。

防水透湿フィルムの正体

写真はゴアテックスグローブを分解したもの。右の黒いグローブが手を通すインナーで、真ん中の白い大きな部材は、インナーに貼り付けられたゴアテックスを剥がしたもの。一番左がグローブ外側の生地だ。

この白く薄い素材がゴアテックスのフィルム。Dドライのフィルムもこれとほぼ同じ薄さ。

こうした高い防水性能を誇る素材では、アメリカの大手化学会社「W.L.ゴア&アソシエイツ社」が開発したゴアテックスが有名だ。ダイネーゼをはじめとする多くのブランドが採用するが、ここで疑問なのはすでにゴアテックスのようなハイテク素材があるのに、なぜ自社で開発を行ったかだ。

例えば、ゴアテックスのような特許素材を使用する際にはパテント料が発生するため製品は高額になる。しかしもっと手頃な値段で同等の素材を開発できれば、より多くのライダーに高性能ウエアが行き渡る。この公共性の追求ともいうべきブランド哲学は、Dドライ開発の大きな原動力のひとつだ。

用途によって変わるDドライフィルムの形態

ジャケットに使用されるDドライのインナー。手が透けるほど薄いが、表から息を吹いても吐息は裏には届かない。

Dドライ搭載シューズの内装部分。灰色の生地に挟まれた白い部分がDドライフィルムだ。

比較用にゴアテックス搭載のブーツ内装も。灰色生地と隣り合わせで貼られた白い部分がゴアテックスフィルムだ。

こちらはパンツのインナーに貼られたDドライ。使用するウエアによってDドライのフィルムにも異なる仕様のラミネートが施されていることがわかる。

もちろん、そこには技術力も欠かせない要素なのだけれど、いまや彼らはNASAと共同で有人火星飛行用の宇宙服開発を手がけるほど。バイクウエアブランドとしての枠をはるかに超えた分野でも活躍している。

こうした彼らならではのバックボーンがDドライを生み出したのだが、その歩みは決して止まることはない。今年後半にはスキーウエアの分野でDドライ・プラスという新素材が投入される。Dドライ・プラスは、Dドライをさらに発展させた3レイヤー構造の独自素材で、現行Dドライを凌駕する耐水圧3万mmH2Oを達成。市場で一定の評価を得られれば、すぐにでもバイクウエアへも搭載されるだろう。

バイクにウインタースポーツ、そして宇宙の世界。様々な分野での研究開発が相互に作用して新たな商品のアイデアに。創業時から一貫してブランドの根幹を支えてきたのは、常に新しい技術を自ら開発して世に問うというものづくり精神にほかならない。

ダイネーゼの宇宙服

NASAと共同開発する宇宙服のインナー。無重力空間で適度に身体を締め付けられるように特殊な裁断と縫製で作られている。