VIRGIN BMW | 1100をリスペクトしつつも 別物へと新化した「R1150GS」 GSナビ

1100をリスペクトしつつも 別物へと新化した「R1150GS」

  • 掲載日/2008年06月03日【GSナビ】

R1150GS

BMWバイクGSシリーズの画像

1100をリスペクトしつつも
“別物”へと新化したR1150GS

今回取り上げるのは、1999年に発売されR1150GSだ。1100の登場によって新時代の幕開けを迎えたGSシリーズは、このモデルによって人気モデルとしての地位を磐石なものにしたと言える。それは、フェイスリフト的なモデルチェンジと思われがちであったにもかかわらず、走りの面では“別物”と言えるほどの進化を遂げ、前作を超える人気を博したからである。

周りの変更にとどまらず、1100で感じていた些細な不満はことごとく解消され、純粋な機械としての洗練度は飛躍的に向上。前作をベースとしながらも、その完成度の高さゆえ、R259ユニットを搭載した新世代GSの可能性をこのモデルで初めて認識したというユーザーも多かったのではないだろうか。

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また、メカニズム的な変更や新技術の投入と言ったトピックスは思いのほか少なく、持てる機能の質を高めるという手法で全体的な性能アップを実現しているのがR1150GSの特長と言えるだろう。

さらに、R1100Sでも控えめに採用されていたが、その後の兄弟モデルにまで波及したアンシンメトリーなヘッドライトが前面に打ち出されたのもこのR1150GSからである。後に続くモデルにも多大な影響を与えたと言う意味で、デザイン的な意義も大きいモデルであったと言えよう。

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フロント周りを中心にデザイン変更されたR1150GS。左右対称のヘッドライトをデザイン的に強調したのはこのモデルから。

最小限の変更で最大限の効果
確信的なモデルチェンジ

改めてR1150GSを見てみると、そのフロントマスクに驚くほど違和感がないことに気づく。見方によっては1100よりもアクの強い顔つきになったにもかかわらず、何故かスタイリッシュに感じる不思議なデザインだ。そして、走行性能は外観以上にブラッシュアップされている。始動から安定したジャブを開始するボクサーエンジンは、前作のボアを2ミリ拡大し排気量を45ccほどスープアップしたものだ。

最高出力は1100の80ps/6750rpmから85ps/6750rpmに、最大トルクは97Nm/5250rpmから98Nm/5250rpmに増大。インジェクションシステムのバージョンアップや排気系の見直しなどによって、トータルな出力特性も格段にスムーズなものとなっている。4作目となるこのユニットからは、BMWがR259系のエンジンマネジメントにも相当手馴れてきたことが窺える。

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デザイン的な洗錬が感じられるR115GS。テレレバー特有フォークが間延びした印象も緩和されている。

また、完全に新設計された6速トランスミッションも、洗練されたエンジン・フィーリングに大きく貢献している。変速比や最終減速比も1100とはまったく異なるもので、よりトルクフルになったエンジンとの相性も抜群。市街地では常に1100よりも一速高いギアで走行可能なほどであり、オフロードではクラッチレバーに指を伸ばす回数が確実に減った。車体関係に目を移すと、基本構成は1100とまったく変わっていないのだが、1.5kgも軽量化されたフロントのテレレバーや、短縮されたパラレバースイングアーム、ギアケースに追加されたピボット補強用のガゼットなどにより、各部には相当な進化の跡が見受けられる。

このように、1100から1150へのモデルチェンジは安易なフェイスリフトではなく、最小限の変更で最大限の効果が得られるよう、入念かつ周到に準備された確信的な作業であったことがわかる。

今だから冷静に判断出来る2台
面白さの1100か、洗練された1150か

1150と1100を比較した場合、増大したパワーよりもエンジン制御のきめ細かさが最も大きな進化として感じられる。それは、アイドリングからアクセルを開け始める時のスムーズなトルクの立ち上がりや、ワイドオープンでもライダーの感覚に遅れることなく追従するリニアなパワー特性として表れている。

さらに、ギアレシオがクロスし、バックラッシュも減少したトランスミッションと合わせて、トータルなトラクション性能は著しく向上。前後サスペンションの改良やバネ下重量の軽減も効を奏して、より有効にエンジンパワーを大地に伝えることが可能となっている。これに伴い、ABSを装備したブレーキもコントローラブルになった。ブレーキを利かせながら曲がる、といった1100が苦手とするオフロードテクニックも1150は得意科目としている。

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左右非対称の顔つきは今やBMWのアイコン的ディティール。上端を跳ね上げたスクリーンにより快適性も向上。

このように、純粋な機械的としての評価では1150は1100を上回り、その違いは外観以上に大きなものだと言える。しかし、1150が1100より優れているのは機械的な洗練度であって、それはバイクとしての良さや面白さとは直結していない。

例えば、1100がデビューした時には、そのあまりの変貌ぶりに先代OHV系GSのファンからは相当なバッシングがあった。しかし、こうして2台を比較してみると1100にはどこかR100GSに通じる鷹揚で豪快な面白さが残っていて、対する1150にはそういったものが希薄だと感じられる。

要は、モデルチェンジが行われても前作が否定されたわけではなく、前作には前作にしかない魅力が宿っているということだ。仮に1150が現行モデルであったなら、「少しでも新しいモデル」ということでそれを選ぶのは当然かもしれないが、双方が最新でなくなった現在、敢えて1100を選ぶユーザーがいてもまったく不思議なことではない。1150と1100。この2台のGSは、純粋にバイクとしての楽しさや味わいで選ばれる時代をようやく迎えたと言えるのかもしれない。

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クランクケースのデザインや排気系の取り回しなど、ボアの拡大だけではなく、さまざまな変更が加えられたエンジン。

R1150GSの特徴の特徴

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全面的に見直された エキゾーストシステム

排気系は全面的に見直し。38ミリから45ミリに大径化し、取り回しもスムーズで等長化されている。出力特性の向上に大きく貢献。

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新形状のパラレバー 短縮とともに軽量化

6速ミッションの長さを相殺するために短縮された新形状のパラレバー。軽量化とともにリンク比も変わり、リアの応答性も向上。

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アップマフラーとクロススポーク

アップマフラーやクロススポークのホイールは継続採用。凝った造形の1100に対して、1150のマフラーはシンプルなデザインとなった。

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操作系も見直し クラッチは油圧作動式

クラッチは油圧作動式になった。始動用のファーストアイドルレバーやハザード、ホーンのスイッチ形状と位置も変更。

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使いやすくなったウインカー

ウインカーの点灯・消灯スイッチは形状や操作方法とともに位置も変更。先代まで不満が多かった操作感は大きく改善された。

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操作系の分散によりシンプルになったメーター

ABSやハザード、グリップヒーターのスイッチが左右のグリップ付近に分散したため、メーター周りはシンプルに。RIDは標準装備される。

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