#02 非常事態が日常です。波瀾万丈の…
- 掲載日/2011年04月27日【S1000RRの楽しみ方】
- 文・写真/淺倉 恵介
晴れて国際ライダー昇格を果たした高田さんだったが、その前途は明るいばかりではなかった…。高田速人、七転八起のレース人生はまだまだ続きます。
非常事態が日常です
波瀾万丈のレース人生
国際ライダー1年生として迎えた1997年、順調だった前年と打って変わって試練のシーズンとなったことをよく憶えています。
全日本 GP250 クラスにエントリーはしたものの、予選落ちが続き一向に成績は上がりません。この年は、初めての鈴鹿8耐挑戦が決まっていたのですが、全日本が上手くいかないことで鬱々とした日々を送っていました。そんなボクを見かねたのでしょう「気晴らしに NK-4 耐に出ないか?」と兄が誘ってくれたのです。
ボクの兄もレースを少々かじった人間で、時折サンデーレースなどを楽しんでいました。兄はバイクと関係ない仕事に就いていますが、今もレースの時は駆けつけてボクをサポートしてくれる、心強い存在です。当時もいろいろと相談に乗ってもらっていましたし、ストレス解消ができれば本業のレースにも良い影響があるはず、と NK-4 耐へのエントリーを決めました。
その年の NK-4 耐は8耐の前の週の開催、アクシデントがあれば8耐にも影響が出かねません。8耐チームのスタッフからは何かあったらどうするんだと反対されました。そんな周囲の反対を押し切って出場した NK-4 耐だったのですが… 物事が上手くいかない時には、悪いことが重なるものです。案の定、決勝中に転倒、骨盤を骨折する大きなケガを負ってしまいました。翌週に迫った8耐は、もちろんキャンセルです。自分の不注意のせいで周りに迷惑をかけてしまったことは、今も申し訳なく思います。
このことは、その後の自分のレースに対する取り組み方を考えさせることにもなりました。
「仕事のレース」と
「楽しむレース」
ボクは、レースには「仕事のレース」と「楽しむレース」の2種類があると考えています。
仕事のレースとは、プロライダーが好成績獲得を請け負って走り、チームもプロの仕事としてバックアップする。対する楽しむレースは、仲間が協力し合ってライダーを走らせる、レース自体を楽しむのが目的です。どちらも同じレースを走っているのですが、モチベーションと取り組み方には大きな違いがあります。全日本選手権や8耐というプロフェッショナルなレースの世界では、まず結果が求められます。ボク自身レースが好きで、それ自体を楽しみたいと考えてはいますが、プロとして走るのならそうとばかりは言っていられません。そのあたりの葛藤があり、1998年、1999年は「もて耐」などの草レースを「楽しむレース」として走っていました。
そんな中、レースを応援してくれていたスポンサーから「2000年の8耐を走ってくれないか?」とのオファーをいただいいたのです。8耐はプロフェッショナルが火花を散らす、国内最高峰のレース。一時は背を向けた「仕事のレース」の世界です。
その頃のボクは「仕事のレース」と「楽しむレース」を両立できるのではないかと考え始めていました。気の合った仲間たちとリラックスしてレースを楽しんでいるうちに、レースに対する考え方、取り組み方が以前とは変わってきていたのです。この年の8耐は完走することができました。チーム全体でいっさい手を抜かず、レースに対して真剣に取り組む。そしてその全てを楽しむ。そうしたアプローチが可能だと感じられたレースだったのです。リザルト的には目立ったものがあったわけではないのですが、ボクのレース人生において大きなヒントを与えてくれた8耐でした。
翌2001年、翌々2002年も全日本や8耐に参戦したのですが、2002年シーズン終了後、自分にとってのターニングポイントを迎えます。
2002年の8耐はカワサキの ZX-7RR で出場したのですが、カワサキ 750cc 勢最上位という順位を得ることができました。そのリザルトが高く評価していただけたようで、とあるメーカー系のチームから翌シーズンのライダーとして声がかかったのです。その時、同じ時期にもうひとつのお誘いがありました。ホンダの販売店「DREAM船橋」の立ち上げにスタッフとして参加しないか? というのがそれです。
ライダーとしては有力チームで走るのは夢のひとつですし、ディーラー制度の先駆けであったDREAM店のスタッフも魅力的な仕事でした。最終的には家庭の事情もあり、DREAM船橋にお世話になることになり、翌年からはバイクショップ店員とライダー、二足のわらじを履くことになったのです。
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