【海外試乗速報】C650スポーツ&C650GT(2015)メディア向け発表会
- 掲載日/2015年11月19日【トピックス】
- 取材協力/日本自動車工業会、BMW Motorrad Japan
文/松井 勉 写真/BMW Motorrad、松井 勉
メガスクータークラスでは最大クラスのエンジン排気量を持ち、プレミアムな装備とアイディアを入れ込んだC。サイドスタンドを出すだけでかかるパーキングブレーキなどもその1つ。ラゲッジスペースの大きさとデザインを融合させた造りなどBMWらしさあふれる2台だ。
もっと楽しく、もっと快適に
メガスクーターに込めたBMWの本気度
デビューから3年、BMWモトラッドはアーバンモビリティーとスポーツ、ツーリングをクロスオーバーさせるメガスクーター『C650Sport/C650GT』をモデルチェンジし、メディア向け試乗会をスペインのバレンシアをベースに開催しました。
世界の人口の多くが都市部で暮らし、その傾向はこれからも変わらない、とするBMWモトラッド。その都市部でも快適で楽しく、プレミアムでローインパクトなモビリティーを提供すべく、2012年に投入されたCシリーズ。新型も70°の角度で前傾した並列2気筒エンジンやゲージ型のスティールフレームなどの基本部分は踏襲しながら、外装、インパネまわりのデザイン、駆動系、サスペンション設定に改良を施し、メガスクーターとしての真価に走る楽しみに深みを増し、登場したのです。ほかにもBMWモトラッドらしいのは、オートマティック・スタビリティー・コントロール(ASC)の標準装備化や、ソナーを用いたサイド・ビュー・アシスト(SVA)なる二輪では初となる装備をオプション設定したこともトピックとなっています。
フォトTOPICS(写真点数/17枚)
01試乗日の天気は雨。バレンシアの石灰質のジャリを混ぜた舗装がその雨で滑る。さっそくASCの必用性を体感。ABSの効果もあり、ウエット路を安心して走れた。市街地、郊外、山岳路、高速とすべてを走ったのはさすがBMW。ランチは四輪のF1バレンシアGPが行われた市街地コース脇(海辺)のレストランだった。
02新しいCのメカニカルパートのニュースは、ミッションレシオのワイド化、ウエイトローラーの重量とスプリングレートの変更、クラッチ摩擦材の変更による制御全体の刷新、サスペンションのスプリングレート見直しなどファインチューンが中心。外装、意匠の変更により、鮮度がぐっと上がっているのも特徴。
03C650Sportで走り終わって「C650GTとは別物な走りだ」と確認すると、エンジン、クラッチ、サスペンションはすべて共通。やや前傾したライディングポジションと角度が違うマフラーから聞こえる元気なサウンドにより、思わずホットな走りをしたくなるパッケージに脱帽。多くのテスターがこのテーブルマジックにかかっていた。
04いくつものパートに分かれている外装パネルを繋ぐようなライン使いが印象的なC650Sport。新意匠のマフラーはサブサイレンサーを省き、音にダイレクト感を増したものへ。BMWの四輪車にも通じる質感の高いシートのステッチやハンドルカバーまわりのデザインなど、ユーザーにBMWらしいスタイルを届けている。
05C650Sportのテールセクションは天地に薄く、しかしリアに行くほどせり上がるようなデザイン。フロントに向けて突き抜けるようなスピード感を出しているのが特徴だ。ナンバープレートホルダーなどは、しっかりとしたステーで取りつけながら、重さを感じさせないのはさすがだ。
06BMWモトラッドがスポーティーなデザインと収納性を融合させたアイディアの1つがフレックスケースだ。停車時に2つのヘルメットを収納可能にする蛇腹式の拡張ポケットがそれ。走行時はフレックスケースが収納されていないと始動ができない安全装置付き。トップケースなどのオプションも用意されている。
07270°の位相クランクを用いた並列2気筒エンジンはパルス感のあるサウンドと回り方が特徴。新型ではマフラーの意匠を変更し、2気筒らしさを強調したほか、サブサイレンサーを省いたことでライダーの耳によりダイレクトな排気音を伝える。ユーロ4適合の高い環境&騒音規制をクリアしているのは言うまでもない。
0810%バネレートを低くした新型。走りの一体感をそのままに乗り心地とロードホールディング性能を向上させている。駆動系では発進時に回転の上ずり感があった部分を是正。CVTのセッティングを変更したことで、TMAXやスカイウェイブ650などの直接のライバルと比肩する動き出しのエレガントさ、低速時の一体化を得た。
09ハンドルバーを低めで幅も適度にタイトな仕上げとしたことで、ライディングポジションはやや前傾姿勢。シート高は800mmとなるが、C650GTよりもシート高を感じるのは、その前傾姿勢のため。シート下収納を適度にし、シート幅は広くなく、足つき性は良好。スクリーンが大きく、高速道路でもラクだった。
10C650GTもギア比、CVTのクラッチ制御が変更されて、発進時に右手に対してより低い回転からリニアに反応してくれるようになった。同様にUターンや交差点の右左折、渋滞路の歩くような速度での前進でも乗りやすさがグッと増していた。乗り心地も快適さが増し、平滑ではないバレンシアの道でもフラットな乗り心地を提供していた。
11アバンギャルドなC650Sportに対し、C650GTはテールランプの意匠、リアのサイドセクションのパネル意匠を換えたことなど、奥ゆかしさを留めた変更としている。これはBMWモトラッドが誇るK1600GTLやR1200RTが持つ長距離・ロングライフツアラーとイメージを共有するため、とのこと。
12左右2分割だったテールランプは左右一体型へ。やや肉厚だったテールセクションのイメージが変わっている。R1200RTやK1600GTLが持つイメージを思わせる。テールランプ下にある2つの穴の中にSVAがモニターする音波センサーが備わっている。
13バックレストの調整機構をはじめ、全体的にエルゴノミクスには定評のあるBMWモトラッドだが、そのステッチや表皮のテクスチャーにまでこだわって質感を高めた新型。標準でシート高805mm、ハイシート、ローシートをオプション設定している。
1440mm径インナーチューブの倒立フォークは、115mmのストロークを持つ。スプリングレートを落とした結果、ゴツゴツ感が減少してコンフォートな乗り味に。ハンドリングは従来通りの一体感あるスポーティなもの。試乗の翌日、空港までBMWの四輪車『320ツーリング』のリアシートで移動したが、その道の悪さを実感するほどC650GTは快適だった。
15LEDデイライトとセットオプションとなるSVA。25km/hから80km/hの間、同一方向に進む速度差10km/h程度で範囲5メートルほどの死角にいる車両を検知し、C650GTのミラーステーについたワーニングランプで知らせてくれるもの。四輪では多く採用されるが、二輪では初の試み。灯火規制のために日本導入は見送られたが、体感するとこれは便利。
16C650GTはハンドルの幅、高さともあり、ライダーはアップライトなポジションでシートに座る。シート幅が適度に絞られていること、フットボードはライダーが足を投げ出すエリアに集中し、足つき性を犠牲にしないデザインであることなど、使い勝手が良い。電動ウインドスクリーンを移動させると、市街地から高速道路まで雨でも高い快適性を確保してくれた。
17駆動系とサスペンションのリファインにより、一体感を増した新型C。F700GSあたりがBMWモトラッド最強の上がりバイクだと思っていたが、この2台も見事にそのポジションに入るほど乗っていて万能かつ楽しかった。セミウエットの峠道を楽しめて、高速道路で悠々と追い越し車線をクルーズし、市街地でキビキビ楽しめる1台をお探しなら間違いなく、Cはその1台となる。
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