VIRGIN BMW | ダイネーゼが考える次世代のセーフティ『D-Air®』システム徹底解剖 特集記事&最新情報

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取材協力/Dainese Japan 文/BMW BIKES編集部  写真/堤 晋一
※この記事はBMWモトラッド専門雑誌『BMW BIKES』の記載内容を再編集・掲載したものです。

掲載日/2015年4月8日

その設立当初から先進性と独創性にあふれる数々のモーターサイクルギアを送り出し、世界中のライダーを支えてきたトップブランドがイタリアのダイネーゼだ。いかなるアクシデントに見舞われてもその体を守るという理想を掲げ、長年開発が進められてきたエアバッグシステムへのこだわりとノウハウを紹介しよう。

費やされた10年もの開発期間

1972年、イタリア北東部の街モルヴェナにてダイネーゼは設立された。以来、モーターサイクル用のライディングギアを筆頭にスキー、マウンテンバイク、乗馬など様々な分野のウェアやプロテクターに携わり、そこで活躍するアスリートを支えてきたのだ。

とりわけモータースポーツにおける貢献度は突出したもので、世界最高峰のロードレースとして知られるMotoGP(GP500時代も含む)では多くのライダーがダイネーゼのレーシングスーツとともに世界の頂点に立ってきた。事実、その設立年から2014年までの43シーズン中、19名の世界チャンピオンが誕生しているのだが、そのうち8名ものライダーがダイネーゼのスーツを着用してきたという実績からもその信頼性が伺えるだろう。彼らがダイネーゼを選ぶ最大の理由は安全性と運動性へのこだわりに他ならず、バックプロテクターやニースライダーなど同社がレースシーンに初めて持ち込み、やがて常識化したアイテムは多岐に渡る。

そんなダイネーゼがさらなる安全性の向上を目指し、近年開発を推し進めてきたものがライダー用のエアバッグシステムだ。これは“D-Air®”と呼ばれるもので、2000年に開発がスタート。およそ10年もの歳月を掛けて完成に至った先進技術のひとつとして、現在急速に広まりつつある。

なんらかの異常を感知した際にエアバッグが膨張。身体への衝撃を和らげるという基本構造はクルマのシステムと同様だが、ライダーの挙動には様々なパターンがあるため、当初はそれがアクシンデントなのかライディングスタイルのひとつなのか、アクシデントだとしてもそれを立て直せたのかそうでないのかを判断し、エアバッグを作動させるかどうかを見極めることが困難だった。しかし、収集した膨大なデータをもとにそれを分析し、計算する方法を確立したことにダイネーゼのアドバンテージがあるのだ。

エアバッグはいつ開くのか?
その判断に独自のノウハウがある!

スライドが始まる。しかし、ここから立て直せる可能性もあるため、エアバッグはまだスタンバイ状態。

通常ではないライダーの姿勢と挙動を検知。作動させるかどうかを最終判断中。

ライダーの体に回転が加わったことをセンサーが検知し、エアバッグ作動。この時はすでにスーツ内で開いている。

D-Air® System

【仕様】
■リチウムバッテリー駆動(約8時間)
■システム単体重量650g

【エアバック作動条件】
■作動速度は時速50km以上
■加速度&角度センサーがライダーの身体が回転するような動きを察知するとエアバッグ作動
■0.045秒後にエアバッグ作動完了

わずか0.015秒の判断

ダイネーゼジャパン
勝川 久也 Hisaya KATSUKAWA

ダイネーゼジャパンの代表として、7店舗の「ダイネーゼ・Dストア」、2店舗の「ダイネーゼ・プロショップ」を統括。ライダーの体を守るD-Air®システムの普及に努めている。

では、その機能を具体的に見ていこう。まずライダーの状態をハンプ(背中のコブ)に内蔵された各種センサーとGPSが検知。それをメモリーに記憶された過去の様々な事象と照らし合わせ、システムの作動が必要と判断されれば高圧縮ガスがエアバッグに噴出され、首の動きを抑制。同時に鎖骨や肩を保護するというものだ。

その最初の判断を0.015秒で行い、0.03秒でガスを充填。計0.045秒が作動完了までの最短時間となる。多くのアクシデントは0.08秒で最初の衝撃を受けるというデータにもとづき、それに間に合うように構築されているというわけだ。

ポイントはその判断基準で、たとえばウィリーが極端な角度に達したとしても、あるいは転倒寸前のハイサイドを起こしたとしてもそこから持ち直した場合は作動しない。異常な挙動が0.015秒を超えて続いても、そこに一定以上の体のヒネリや回転が加わらない限りは転倒と判断せず、不用意にエアバッグが膨らまないようにできているのだ。そのアルゴリズム(算法)こそが他メーカーにはないダイネーゼ独自の特許であり、ドイツの第3者安全認証機関『デュフズード』が承認した唯一のシステムなのである。もちろん作動後のメンテナンスは国内の各店舗で対応可能。日本でもこの3月(2015年)から販売が始まっているので、その先進のテクノロジーを身に纏ってみてはいかがだろう。

D-Air®システムの考察

車体側にはセンサーを必要とせず、すべてのシステムをスーツに収められるD-Air®
わずか650gというコンパクト設計にあらゆる機能が詰め込まれている

SWITCH

システムはジッパー上部のボタンを留めることで起動し、リチウムポリマーバッテリーによる連続作動時間は約8時間。

未着用時は付属のダミーボタンによって誤作動を防ぐことができる。

INDICATOR

システムの作動や充電状態はスーツ右腕に備えられたインジケーターで確認することができる。

バッテリーを始めとするシステム一式はスーツ内側からハンプ内に収納可能だ。

充電器やUSBなど必要なアイテムはスーツに同梱。

AIR BAG

容量約4リットルのエアバッグによって首から肩を保護。過去5年、MotoGP全クラスで計359回のクラッシュがあったが、D-Air®搭載スーツによる肩の骨折は0回、鎖骨は1回に留まっている(それ以外のスーツは肩23回、鎖骨29回の骨折を数える)。

SENSOR

ライダーの姿勢や速度を3つの加速度センサーと3つの角度センサー、そしてアシストGPSで分析。走行中の状態を常に内蔵メモリーに蓄積された過去のデータと照会し、そこにない姿勢を検知した際にアクシンデントと認識。エアバッグが作動する。またラップタイムや走行軌跡などデータロガーの役割も備えている。

DAINESE D-Air® Racing Suits

[商品名・サイズ・カラー]
D-Air® RACING MISANO ESTIVA■39万9,600円(税込)※表示価格は2015年4月現在です
サイズ■44-60
カラー■ブラック/ブラック/レッド、ホワイト/レッド/ブラック、ブラック/ブラック/ホワイト
※MFJ公認スーツ