日本は世界でも数少ない交通事情の発達した国(交通安全先進国)である。街を走れば譲り合いや、お礼といった行為も頻繁に見る秩序ある交通社会が築かれている。だが、車、バイクを含め約7,000万台の車両が走っている現在、まだまだ事故は日常的なこと。囲いのないバイクが危険と隣り合わせなのは間違いない。そして事故は一瞬の出来事。当事者となれば興奮状態に陥り、判断力も失う。後の過失割合や交渉でバイクが不利になるケースは多い。
そこで最近、注目されているのがバイク専用ドライブレコーダー『ニリドラ』だ。今回は実際にニリドラを愛用する一般ユーザーの石川氏、ニリドラを開発・販売する大慈彌(おおじみ)氏、車体へ装着するBMWモトラッド正規ディーラー『FLAT』寒河江氏という、それぞれ立場の違う3者に集まっていただき、ニリドラの有効性を徹底的に語ってもらった。
編集部「まずニリドラをつけた経緯について教えてください」
石川「私は仕事で日本中をバイクで移動するのですが、昼夜問わずバイクで走っていると、いろいろ危険な状況に遭遇します。過去にも事故の経験があったので、その後は汎用のドライブレコーダーを装着していたんです。最初に使っていたのはカメラが前方のみのタイプでした。しかし夜中に大きな国道などを走っていると、トラックに煽られることが多く、後ろにカメラがあることが非常に重要だとわかったんですね。ちょっとしたきっかけから大慈弥さんと知り合い、ニリドラは前後にカメラがあることと、自動で上書きできることを知り、装着してみたんです」
大慈彌「日本ほど交通社会が発達していない国では、事故は日常茶飯事で、悪質なドライバーや頼りにならない警官も多いため、ドライブレコーダーの存在は自分を守るツールとして非常に有効的なんです。しっかりした映像が残っていれば後の警察の対応や裁判、保険などで圧倒的に有利にことが運びますからね。特にロシアや中国はまだまだ無秩序で、非常に事故が多いですから、保身の意識がドラレコの必要性を高め、現在も広く普及されていっています。日本でも運転を業務とするタクシーや路線バスなどにはドライブレコーダーが搭載されていますよね。
私はいろいろな事故のケースを見てきましたが、バイクの事故で、被害者のライダーが死亡してしまった場合“死人に口なし”で、本当はバイク側に落ち度がないのに、加害者側が保身のために嘘の証言をすることが多々あり、遺族が苦汁を舐める結果もこれまでたくさんありました。しかしドライブレコーダーがそのときの様子を捉えていれば、正しい結果につながるんです。そのためにも、私はこのニリドラを普及させていきたいんです」
寒河江「実際にニリドラを装着して事故に遭ったときの様子を拝見しましたが、本当に克明に記録されていたのが印象的でした。やはり具体的な映像を見せられると、事故の際このツールが非常に有効であることが実感できましたね。販売店としても防護機能の高いジャケットなどと同じように、ライダーの安全を高める道具、自分の身を守る道具としてお勧めするべきだと思いました。ニリドラはBMW純正ではありませんが、弊社のような正規ディーラーでもきっちり取り付け、推奨したいと思いますね」
石川「私は実際に過去に事故にも遭ったし、怖い思いもたくさんしてきました。つまりそんな場合でも映像が残っているだけで当事者の立場は大きく変わるんですね。映像は確固たる証拠なんです。自分達を守るのは自分達でしかない。日本人はそういう武器に対しての意識が低過ぎると思うんです。体がむき出しであるバイクに乗るライダーこそ、このドライブレコーダーが必要ではないか、と痛切に感じるんですよね」
石川「特に夜中なんですが、バイパスのあるような大きな国道では、本当に殺人的な運転をするドライバーも多いんです。普通に車の流れに乗っているのに煽られることもしょっちゅう。あるとき煽ったトラックを停めて直接注意したわけですが、始めは横柄だった態度が、映像を記録していると言った瞬間コロリと変わり、反省の色を示したということもあります。また、あまりに酷い場合は近くの警察に駆け込んで、その映像を提供し、それが証拠となって犯人を特定した事例もありました。つまりドライブレコーダーは“動く防犯カメラ”的な使い方もできるんですね」
大慈彌「最近のタクシーなどはドライブレコーダーをほぼ搭載していますよね。大きな事故の場合、タクシー会社は警察に映像を提供することもあります。GPSの搭載で時間と場所がはっきりするので、動く防犯カメラなんですよ。世の中の車のおよそ3~4割にドライブレコーダーが普及したら、大都市圏ではほぼどこかに必ずカメラがあることになるので、事故の詳細が克明になり、よくある『目撃者探しています』という看板も少なくなるでしょうね」
石川「そうそう、例えばツーリング先での昼食時も、私はカメラを回しっぱなしですよ。万が一、仲間のバイクや自分のバイクをいたずらする犯人がいたら、カメラに映りますからね。ニリドラはあまりバッテリーに負担をかけないので、そんな使い方も可能なんですね」
取材協力店/BMW Motorrad ディーラー
FLAT MOTORRAD FORT
住所/東京都大田区大森西1-2-1(環7沿い)
電話/03-5493-1381(代)
営業時間/10:00-19:00
定休日/毎週火曜・第1月曜(1、5、8月除く)
ニリドラを搭載する石川氏の愛車はBMW K1200S。ドライブレコーダーを搭載した状態で日本各地を走り、これまで走った距離は約4万キロ。エンジンの回転数により映像のブレが出ることもあったため、さまざまな緩衝材を試すなど、工夫を凝らして装着してあるそうだ。
大慈彌「ドライブレコーダーは常に録画されていますから、当然ですが、運転者の行動も記録されているんですね。つまり自分がおかしな行動を取り、それがトラブルにつながった場合は即証拠になってしまうわけです。だから周囲の目を気にするようになり、それがスマートな運転につながってマナーが良くなる、という一面もあるんです。さらには車にしろバイクにしろ、カメラが増えれば“常に撮られている”という意識が高まり、それが全体的なマナーアップにつながっていくはずです。マナーへの意識が高まれば事故も減り、事故が起きても過失割合がはっきりする。こんなにいいこと、効率的なことはなかなかありませんよ」
大慈彌「最近はバイクに装着して映像を楽しむファンカメラも増えてますよね。携帯バッテリー駆動で手軽に撮影でき、価格も手ごろですからツーリングでもサーキットでもよく見かけます。ニリドラにそういった楽しみ方もありますが、ファンカメラとは根本的な目的が違いますから、値段や画質などは比較対象にならないんですよ。ドライブレコーダーはそもそも、いざというときのためのものであって“その機能の延長線として遊びとしても使えますよ”という程度です。その比較が難しいですね。飛行機でいう“ブラックボックス”的なもの。あくまでもトラブルに際して対応するツールなんです」
寒河江「確かに、うちのようなディーラーでカメラの購入を考えているお客さんは多いです。しかしやはり手軽なファンカメラに行きがちですよね。あとは、まだドライブレコーダー自体が普及していないので、様子を見ている人も多いです。工業製品なので初期モデルを敬遠する方もいらっしゃいます。壊れないのかという不安感があるんでしょう。でもそういったお客さんに、もはや装着していないと自分の身を守れない、と訴えかけていくことも必要なんだと思います」
さまざまな意見が飛び交う中で見えてきたのは、ドライブレコーダーとは、バイクにこそ必要な身を守るツールであり、動く防犯カメラ的要素やマナーアップにつながるなど、多くのメリットがあること。しかしその一方で、まだまだその有効性に対する認知度が低いのも事実。そして前後のカメラや長時間の録画と駆動、上書きシステムなど、バイク専用のドライブレコーダーとしての機能をしっかりと備えたものは『ニリドラ』だけであるということもわかった。さらにはBMWのような、動作がコンピューター制御され、整備にシビアなバイクでもディーラーであればきっちり装着できる事実も判明。
ドライブレコーダーの必要性をどこまで感じるか、それは人それぞれだが、近い将来バイクへのドライブレコーダー装着率が高くなるのは間違いないだろう。事故はいつ起きるかわからない。楽しいバイクライフを安全に長く送るためにも、ドライブレコーダーの装着はヘルメットやプロテクター内蔵のジャケットなどと同様、安全対策の一環として考慮すべきツールなのである。
ニリドラのバイクへの装着は基本的に単純。バッテリーやアクセサリーコードから電源を取り、前後にカメラを設置。メーター周辺にON/OFFスイッチとインジケーター、マイクを装着し、あとは空きスペースに本体を収納すればO.K.だ。しかし数々の電子ユニットをコンピューターが制御するBMWの場合、素人が装着するのは難しい。やはりFLATのような確かな技術を持つメカニックに装着してもらうのが最善だ。
今回は R1200RT に装着してもらったが、各パーツの位置調整や、美しく無理のない配線処理、確実な接続など、その作業はさすが。しかしそのためにはカウルやタンクの着脱が必要なので、取り付け時間は約3~4時間。取付け工賃は、今回のRTの場合で2万4,000円となる。
住所/東京都大田区新蒲田1-13-2 塩田商事本社ビル2F
電話/03-5710-4556 FAX/03-3732-9404
営業時間/10:00-17:00
定休日/土、日、祝
今回紹介した『ニリドラ』や車用のドライブレコーダー『あんしんmini』を取り扱っている株式会社あんしんマネジメント。同社のサイトにはニリドラの使用法、キャンペーン、実際の走行動画など、たくさんの情報が掲載されている。またサイトからは実際に購入することもできる。