VIRGIN BMW | 縦置多気筒エンジン搭載モデル Kシリーズ再考 特集記事&最新情報

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今も生き続ける縦置多気筒エンジン
その魅力を改めて考える

BMW縦置き多気筒エンジン独特のトルク感と4輪のBMWを髣髴させるシルキーな回転が特徴のBMW縦置多気筒エンジン。現行モデルで採用しているのはK1200LTのみとなり、すでに主役の座を新世代の並列4気筒エンジンに譲ったとも言える。しかし、その評価は一線を退いた今なお高く、名作エンジンとの呼び声も高い。実際、3気筒モデルも合わせてRシリーズにも引けをとらないモデル展開を可能とした汎用性と、ユニットそのものの耐久性の高さ、車両搭載状態でのバランスの良さ、ウルトラスムーズな出力特性など、その美点を上げれば枚挙にいとまがない。

 

一方、中古車市場を見渡してみれば、この形式のエンジンを搭載したモデルはまだまだ玉数もあり、しかも価格がこなれていることに気づくはず。今回の特集では、 この縦置きエンジンを搭載したKシリーズの魅力を再考するためにK1100RS、K1100LT、K1200RS、K1200LTの4台にスポットを当ててみた。

K1100RS

高速クルージングも得意
RSの符号は伊達じゃない

K1100RS1992 年に発表されたK1100RSは、先代のK100RSと基本構成は同一だ。しかし、環境問題に対応するためにいち早く搭載した触媒装置によるパワーロスを補うという目的で、エンジンは1092ccまで排気量を拡大。これによる最高出力の変化はないものの、その発生回転数はかなり下げられ低速から逞しいトルクが感じられるフィーリングとなっている。車体の取り回しでは、先代のK100RSよりも若干の重量増を感じるが、発進してしまえば明らかに太くなったトルクのおかげで余裕の走りを堪能することができる。その威力はあらゆるステージで発揮され、例えば上りコーナーの立ち上がりなどでもパワー不足を感じるこ とはなく、街中ではシフトチェンジを控えたジェントルな走りも可能だ。

 

K1100RSまた、K1100RSの重心の低さは特筆ものだ。意外に知られていない事実だが、エンジンの低重心がもたらす安定性では当時のOHV-Rシリーズよりも一枚上手。車体を傾けていくときのロール軸が極めて路面に近く、深々とバンクしてもライダーは全く不安を感じない。それが積極的なライディングを可能とするのだ。とりたててハイパワーでもないBMWが何故ワインディングでも速いのか、その疑問はこのモデルに乗れば氷解することだろう。 一方、高速クルージングが快適なのもK1100RSの特徴だ。100から1100になって若干振動が増えているが、その分100が2バルブから4バルブへと進化した時に指摘されたトルク感の希薄さは解消。また、アクセルを開けても一気に吹け上がることがない穏やかな出力特性はライダーを疲労から解放して くれる。K1100RSの高速クルージングには快適で上質な世界があるだけだ。

 

K1100RS

プロコメント今でも通用する魅力をもつK1100RS

K1100RS、いいですね。実はBMWの縦置きエンジンはお気に入りで、かつてはK75Cに乗っていたぐらいです。K75Cは3気筒でしたが、4気筒なら間違いなくこのモデルを選んでいたと思います。2バルブのモデルはゴリゴリしたトルクが魅力ですが、4バルブでもK1100RSならトルクが薄いとは感じないですからね。それにこのモデルになってからスタイルもかなり洗練されていると感じます。

プロコメント古さを感じさせないスタイルが魅力

スポーティーに走れるこの世代の「縦K」と言えばやはりこのモデルが最右翼でしょう。もっと前のモデルなら「K1」もありますが、ツーリングに使うにはちょっとポジションもキツそうだし、パニアケースもつかない。その点K1100RSなら荷物も積めて、ポジションもさまざまなステージにもマッチする。古さを感じさせないスタイルも魅力的だと思います。

プロコメント中古車を検討するならエンジン下部をチェック

K1100RSは1992年に発表されたモデルですが、そこはBMWですからまだまだ現役として走っている個体を多くみかけます。基本的に丈夫な車輌なのであまり心配する必要はありませんが、中古車として購入を検討する場合はエンジン下部、特にクラッチハウジング接合部分からのオイルや冷却水の漏れを確認することが重要です。

K1100LT

軽いハンドリングは日本にベストマッチ
ツーリングマシンとしての魅力も健在

K1100RSK1100LTは1991年に発売を開始。その後K1200LTが登場するまで、比較的長い期間継続生産されていたモデルだ。基本的な車体構成は他の100や1100の Kシリーズと同様で、電動スクリーンを備える巨大なカウルや、アップライトなポジション、前後タイヤサイズ、ファイナルレシオなどが専用の仕様となっている。もっとも近い構成のK1100RSと比較すると相違点が少ないように思われるかもしれないが、乗り味は全く違うものとなっているのが興味深い。特に重要な役割を果たしているのがタイヤだ。RSは120/70-17、160/60-18というサイズのラジアルタイヤを履いているせいもあり、タイヤの銘 柄や磨耗状態によって、ハンドリングが大きく変化する傾向がある。

 

 

K1100RS一 方、K1100LTは、110/80-18、140/80/17という細めのバイアスタイヤを装着し、しかもフロントの方がリアよりも大径という設定。そのため、タイヤの状態や銘柄に影響されることも少なく、ハンドリング自体も軽く全域でニュートラルだ。また、歩くような速度でUターンしたとしても前輪が切れ込むようなことがなく、もっと小さな排気量のモデルを扱っているような気軽さで乗ることができるのだ。装備重量で300kg近い重量車の中にあって、この乗りやすさは異例中の異例と言えるだろう。RSと比較するとアベレージスピードは低いものの、快適性やハンドリングを考えると、このモデルの方が日本の道にはあっていると感じられるほどだ。もちろん、乗りやすさだけがK1100LTの魅力ではない。信頼性が高いエンジン、絶妙なセッティングがもたらすハンドリング、高速巡航の快適性など、このモデルには多くの人がBMWに求める魅力が凝縮されていると言えよう。

 

K1100RS

プロコメント今なら気軽に乗れる豪華ツアラー

K1100LTは、日本の田舎道に一番マッチする縦Kだと思います。新車が販売されていた頃はゴージャスなツアラーでしたが、今見ると少しだけ古臭いというか枯れた感じが・・・。でもその分気取らずに乗れるようになったし、ウインドプロテクションを含む高いツーリング性能は未だに魅力的。信じられないほど軽いハンドリングは日本の隅々まで走るには最高じゃないですか。

プロコメントワインディングで振り回すのがカッコいい

実は今、K100LTを所有しています。僕としては2バルブのトルク感が好きですが、K1100LTの洗練されたフィーリングを持つエンジンはちょっとだけ羨ましい。走りはじめるととても軽く扱えるのに、大柄なカウルをもつLTをワインディングに持ち込むと豪快なライディングをしているように見えるから不思議ですね。全体の重心が低いので、実際に振り回せます。

プロコメントチェックポイントはK1100RSと同様

チェックポイントはK1100RSと同様 K1100LTは、1991年に発売されてからK1200LTが登場するまで長い間LTのポジションを守ってきた息の長いモデルです。それ故この形式のエンジンを搭載したモデルとしては熟成が極まり、不具合もあまり出ません。ただし、中古車を検討する場合はエンジン下部をチェックして、オイルや冷却水の漏れを確認することが重要なのはK1100RSと同様です。

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K1200RS

100馬力オーバーに相応しい車体
その速さは数値には現れない

K1100RSBMWは長い間自社製のモーターサイクルに100馬力以上のパワーを与えることを否定してきた。それは、公道を走る上でそれ以上の馬力は必要ないという哲学を堅持していたからだ。しかし、より高速化した交通をリードし、疲れずに高速クルージングとワインディングを楽しめるという、現代のライダーがBMWに求めるであろう性能を追求する場合、100馬力では限界があった。その状況を打破するために、BMW はこのモデルで初めて130馬力のパワーを市販車に与えたのである。かくして、余裕のパワーを獲得したK1200RSにはそれに見合う車体も用意された。強度メンバーであるエンジンを前後からがっちりと抱え込む新開発アルミ製バックボーンフレームと、フロントのテレレバー、リアのパラレバーという車体構成 は余裕の高剛性を実現していたのである。

 

K1100RSヘ ビー級の車体と滑らかで乗り心地の良いサスペンションの組み合わせからは想像もできないことだが、構造的に姿勢変化が少ないK1200RSは抜群の走行安 定性を誇る。高速でワインディングのギャップに飛び込んだとしても、一瞬バネ下が忙しく仕事をするだけで何事もなかったかのように走り続けてしまう。縦置き4気筒エンジン搭載モデルの美点である重心の低さも健在だ。装備状態で285キロに達する車重は1200ccクラスでも明らかに重たい部類に属するが、重心 が低いために非常に扱いやすい。最初はグラマラスなフルカウルがもたらすボリューム感に戸惑うものの、走り出せば信じられないほど軽快なフットワークの持ち主であるこ とに気づかされることだろう。軽くバンクするのだが、コーナーリング中は超安定。これは縦置き4気筒エンジンがもたらす独特の感覚で、現在もその魅力は色 あせてはいない。

 

K1100RS

プロコメント飛躍的に進化した車体と足周りが魅力

さすがにこの世代のモデルとなると、非常に近代的な乗り味。車体が強化された分、車重もヘビー級になりましたが、がっちりとした剛体が路面を滑るように走るフィーリングは感動的です。また、Kの美点である重心の低さは1100までのモデルの方が強く感じますが、K1200RSは足回りが飛躍的に進化しているので、速度が上がれば上がるほどそのアドバンテージを実感します。

プロコメント100馬力規制解除の真意が分かるモデル

今の水準からすると、280キロ超の車体に対して130馬力という数値は控えめだけど、パワー不足とは感じないです。それどころか、車体と足周りがしっかりとしているので、下手なスーパースポーツよりも思い切ってコーナーに飛び込んでいけます。BMWが自ら課した100馬力規制をこのモデルのために解除したのは、安全でなおかつ速いという目的を達成するためだったのだと理解できます。

プロコメントチェックポイントはラジエーターとバッテリー

中古車として検討する場合は、カウル内左右に振り分けられたラジエーターの変形に注意してください。走行中に転倒すれば間違いなく変形します。また、 840Wのオルタネーターを装備して発電量には余裕がありますが、インテグラルABS搭載車輌はバッテリーの状態にシビアです。エラーが出ると通常の制動力が得られませんから、十分に確認してください。

K1200LT

今もフラッグシップの座に君臨
走りに破綻がない稀有なビッグツアラー

K1100RS新世代の並列4気筒エンジンが登場した現在においても、縦置き4気筒エンジンを搭載した唯一の現行モデルとして、そしてBMWの旗艦として君臨し続けているのがK1200LTだ。発表された当初はK1200RSがベースだとは思えないほどの巨体から威圧感すら感じたものだが、今となっては目が慣れたためか、極端に大きなモデルという印象は薄らいでいる。しかし、取り回しやUターンといったシーンでは、ビッグツアラーに共通したある種の緊張感を伴うのは致し方ない。その大きさはともかくとして、このモデルはBMWにしか作れない特別なモデルだと言える。圧倒的とも言える快適性を堪能しなが ら高速道路で都会を抜け出し、タイトなワインディングに一歩足を踏み入れればその理由が理解できるはずだ。乗り心地が良いだけのツアラーならば、柔らかい足周りが災 いしてペースを落とさざるを得ないようなコースでも、K1200LTなら涼しい顔で楽しむことが出来るのだ。

 

K1100RSパラレバー、テレレバーといった前後の磐石な足回りと、超ヘビー級の車体との組合わせは、ツアラーとしてならば、むしろ好ましいと思えるほど。それ故、 ライダーはK1200LTを普通に走らせていれば、ワインディングでも相当なペースを維持できるのだ。走行性能においては妥協を強いられるビッグツアラーが多い中、これほど見事走りっぷりを披露してくれるモデルはK1200LTを除いて他に存在しない。そういった意味で、今もなおこのK1200LTは特別なモデルでありつつけているのだ。もちろん、ゴージャスなスタイルや装備といった面でもK1200LTは特別だ。完全にインテグレートされたリアのケース類と完 璧な快適性を誇るタンデムシートを併せ持つのは、今でもこのK1200LTだけなのだから。

 

K1100RS

プロコメント走りに妥協が一切ないビッグツアラー

K1200RSがベースだけど、車体は巨大化して重量も100キロ近く増えてしまうともはや全くの別物です。この巨体とスタイリングから、その走りに疑いをもってしまったけれど、乗ってみたらそんな印象は払拭されました。エンジンは出力をかなり落として、その分を低中速トルクに振り分けるチューニングを施しているので、パワー不足は感じません。ワインディングを全く苦手としていないところが凄いと思います。

プロコメントワインディングが楽しめる究極の贅沢

K1200LTの豪華な装備に身をゆだねてツーリングしていると、とても豊かな気分になります。それは単純に快適で安楽だからという理由ではなく、ゆったりとした走りに飽きてしまった場合でも、K1200LTなら普通のバイクと同じように飛ばすこともできるから。音楽を聞きながらワインディングでスポーツもできるなんて究極の贅沢だと思いませんか?

プロコメント重量車ゆえのチェックポイント

K1200LTは、縦置きエンジンの現行車として貴重な存在になってしまいました。もちろん新車を購入することができますが、中古車として検討する場合は、ホイールの歪み、振れ、めくれに注意が必要です。また、前後連動のインテグラルABSを搭載しているのでリアブレーキローターは早めに磨耗します。厚みを必ずチェックしてください。

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