#01 ライダー戸田 隆の登場!
- 掲載日/2012年07月20日【S1000RR 全日本選手権参戦記】
- 取材協力/G-TRIBE 文・写真/淺倉 恵介
S1000RR を駆り、国内ロードレースの最高峰である MFJ 全日本ロードレース選手権に参戦中のレーシングライダー戸田 隆選手。BMW でのレース経験が豊富な戸田さんの活躍、レース活動を追う連載企画のスタートです。
BMW だから、S1000RR だから走る
全日本ロードレース参戦中の戸田 隆選手
BMW 初の本格的スーパースポーツとして大好評の S1000RR。その S1000RR のデビュー以来、国内2輪レースの最高峰 『MFJ全日本スーパーバイク選手権』 の 『JSB1000』 クラスに S1000RR で挑み続けるライダーがいる、それが戸田 隆選手だ。戸田さんは1963年生まれの49歳。レーシングライダーとしてだけではなく、ジャーナリストとしても各バイクメディアで活躍中なので、その存在を知る人も多いだろう。VIRGIN BMW.com では、戸田さんと S1000RR のレースに注目し、今シーズンのレース活動をお伝えすることになりました。第1回目となる今回は、戸田さんが何故 S1000RR でレースを続けてきたかを語ってもらいました。
「2002年の8耐から BMW でサーキットを走るようになったんだけど(R1100S、K1200R で鈴鹿8時間耐久レースに参戦。もて耐では、K1200R と HP2 Sport で参戦。HP2 Sport では優勝も果たしている)、正直なところ、どれもレース向きのバイクではなかったよね。けれど、BMW というメーカーの技術力と設計思想には感じるものがあったんだ。R1100S で8耐に出た時の話だけど、パワーの面じゃ他のバイクの相手にならないから、ストレートでは抜かれ放題。でもS字コーナーとかがもの凄くスムーズで速い。ストレートで抜いていったヤツに仕返しが出来ちゃう。ストレートが速いだけじゃあラップタイムは稼げないし、レースで良い結果は残せない。R1100S はレーシングユースを考えていないバイクのはずなのに、何気に速いし、成績も残してしまった。
これはバイクとしての完成度が高くなければ出来ないことで、『BMWというメーカーは、他とは何か違う』と、そう思ったよね。例えばだけど、GS でサーキットを走っている人って、意外に多いよね? GS って、見た目は思い切りオフロードよりで、とてもサーキットを走るようなバイクには見えない。でも、BMW ならソコソコ走れちゃうんだよね。僕らは GS がサーキットでも楽しく走れることを知っているから違和感は無いけど、これって実はスゴいことだよ。他のメーカーのあの手のバイクで、そんな遊び方をしている人が居ますか?ってコト。
そんなこんなで、BMW でレースに参戦できる機会があれば、可能な限り走ってきた。そこに S1000RR が発表になったから 『これはレースをやりたいな』 と。本気になった BMW がどれほどのものを作ってきたのか? というところが気になって仕方なかったしね」
そうして、戸田さんは2010年、2011年の全日本に参戦。2012年はモデルアップデートを果たした S1000RR でレース活動を行っている。
戸田さんの全日本参戦マシンは、2012年モデルの S1000RR。エンジンは完全ノーマルで、ECU のみ BMW モトラッド純正パーツである『キャリブレーションキット』を使用してリセッティングしている。マフラーは純正レースキットパーツの『アクラポヴィッチ』で、エアクリーナーは『DNA』を使用。リアショックユニットは『ハイパープロ』、前後ホイールは『O・Z』を使用し、タイヤは『ブリヂストン』を履く。外装パーツは『マジカルレーシング』製。ブレーキのマスターシリンダーは『ゲイルスピード』。バックステップは『Gトライブ』のオリジナルパーツで、トリプルツリーは『Gトライブ』と『ウイリー』のコラボレーションパーツ。エンジンオイルは『レッドライン』。ゼッケンは昨シーズンの年間ランキングである13だ。
「正直なところ、今年はレースをやるか迷っていたんだよね。けど、2012年モデルの試乗会に参加して、レース活動の継続を決めたんだ(戸田さんは S1000RR のワールドローンチにジャーナリストとして参加。その時のインプレッションは コチラ )。先代モデルで、レーシングマシンとして不満に感じていた部分が、2012年モデルではかなり改善されていたんだよね。それで 『これで走ったら、どれくらいイケるかな?』 と、俄然興味が沸いてきたし…。だから、新型 S1000RR の存在がなければ、今年は全日本を走っていなかったかもしれない。実際に S1000RR は、今年に入ってレースで活躍しているでしょ? WSBK でも勝っているし、日本でも酒井選手が好タイムを記録してる(8耐優勝経験を持つ酒井大作選手が、S1000RR で今年の8耐に参戦を表明)。 S1000RR の戦闘力は確実に上がっているんだよ。だから、自分だけがパッとしない気がしていてね。まだ、レースは1戦しか走れていないし、それも怪我からの復帰戦(戸田さんは、全日本第1戦の練習中に転倒して負傷、第1戦と第2戦をキャンセルしている)だったから、内容も満足できていない。後半戦ではスカッとするレースをしたいよね」
戸田さんは練習中のアクシデントで怪我を負ってしまったため、第1戦と第2戦をキャンセル。今シーズンは5月13日に開催された第3戦つくば 大会からスタートした。手の甲の骨折が完治しないままのレース参戦に加え、事前テストも不十分でマシンのセッティングも煮詰められず、体力的 にもキツいレースとなった。レース中、体力の限界を感じて意識が遠のく局面もあったそうだが、気力で完走。14位でフィニッシュしてポイントを獲得した。全日本の次レースは8月26日のスポーツランドSUGO大会。S1000RR で戦う戸田さんの応援に、是非駆けつけてほしい。
戸田さんは2012年の鈴鹿8耐にも S1000RR で参戦。チームは VIRGIN BMW.com 読者にはお馴染みの 『Team Tras』。チームを組むライダーは 高田速人選手 と、松下ヨシナリ選手 だ。高田選手とは一昨年の8耐を S1000RR で共に戦った仲だし、松下選手も 『もて耐』 優勝時にチームを組んでいる間柄。チームワークもバッチリ、これは結果も期待したいところ。戸田さんに、間近に迫った鈴鹿8耐への意気込みも語ってもらった。
戸田さんと高田さんは2010年の鈴鹿8耐でのチームメイト。松下さんとは2008年のもて耐で HP2 Sport で優勝を果たした時のチームメイト。3人の息はピッタリ合っている。チーム力がモノをいう耐久レースでチームワークは非常に重要となる。2012年の『Team Tras・BMW S1000RR』には大いに期待できそうだ。
「タイヤの乗り換えに苦労しているねえ。自分は全日本ではブリヂストンのレース用タイヤを使っているけれど、8耐のチームではダンロップタイヤ。その特性が事前に想像していたものより大きく違うから、正直なところ面食らっている感じ。ブリヂストンで蓄積してきたセッティングのノウハウが全く当てはまらない。これはどちらの性能が上かという話ではなくて、タイヤの設計についての考え方の違いだね。どうやって乗るかを早く掴まないといけない。普通はシーズン中に違うメーカーのタイヤを履くことはないから、これは面白い経験をさせてもらっていると思う。今回の8耐はそういう意味ではスゴく面白いよね。チームでは自分が1番年長だし、後輩には走りで負けられないっていうか(笑)、 それはともかくとして、チームが少しでも上に行けるように頑張ります」
2012年の鈴鹿8耐には、昨年 4位入賞を果たしたフランスチーム 『BMW MOTORRAD FRANCE 99』、それに酒井大作選手が率いる 『Team MOTORRAD 39』、そして戸田さんの所属チーム 『Team Tras・BMW S1000RR』 の3チームが S1000RR でエントリー。決勝レースは7月29日! ビーマーなら、是非とも鈴鹿に駆けつけて声援を送りたいもの。2012年の8耐は、BMW 勢の活躍に期待だ!
■ 高田選手のブログ 『高田 速人 8810Rの再挑戦』
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#02 鈴鹿8耐ウラ話(その1)
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