VIRGIN BMW | R1200GS(2010-) 試乗インプレ

R1200GSの画像
BMW Motorrad R1200GS

R1200GS(2010-)

  • 掲載日/2010年02月19日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/バージンBMW編集部

常に先頭を走る BMW の代表モデル
エンジン形式の変更も GS から

GS モデルが 1200 ボクサー(ヘックスヘッド)を搭載し、R1200 シリーズの先陣を切って登場したのは2004年のこと。R1200GS はその後、2008年にエンジン、ミッションの見直しと、電子制御式サスペンションやクルマ同様の駆動系コントロール・システムの搭載を可能とし、外装の小変更とともにマイナーチェンジを受けた。そして2010年、BMW モデルラインナップをけん引する GS は、新たに DOHC ボクサーを搭載して大幅にリニューアルした。

すでに熟成の域に達している車体デザインから、一目で変更された部分を判別するのは難しいものの、左右に張り出したシリンダヘッド・カバーのデザインはこれまでと異なる。また走行性能と環境への配慮から、サイレンサーとエキゾースト・パイプのジョイント部分に新たに追加装備されたバタフライ・バルブや、前後ホイール・デザインが刷新されているなど、注視すれば気付くポイントはいくつか見つけることが出来る。

すでに主たる走行フィールドをグラベル(砂利道、未舗装路)からターマック(舗装道)へと移してきた GS が、この度最も大きな変更となった DOHC エンジンを搭載したことで、どのような将来を見据えているのか、非常に興味深いところである。

R1200GSの特徴

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より使い勝手が良くなった
オールラウンド・ツアラー

最大の特徴と言えるのは、バルブ駆動方式をこれまでの SOHC (シングルオーバーヘッドカムシャフト)から DOHC (ダブルオーバーヘッドカムシャフト)へと変更したことだろう。それによって低回転側のトルク増大と高回転域での広いパワーバンドの設定を可能としている。実際に乗ってみればその違いははっきりと体感出来るもので、クラッチミートして走り始める瞬間から、非常に「軽く回る」ようになっている。初めて GS に接するライダーにとっては、大排気量ツイン・エンジンであることをつい忘れてしまうのではないだろうか。

水平対向2気筒エンジンは BMW Motorrad の象徴であり、メーカーも頑なに進化と熟成を継続してきた。HP2 Sport 譲りの DOHC エンジンを搭載した GS を見ると「もうこれ以上は無いだろう」と思うのだが、良い意味で毎度裏切られている。ちなみに2004年以降、R1200GS の最高出力と最大トルクを並べてみると、数値上での違いは下記の通り。

歴代 R1200GS の最高出力と最大トルク

  • 【DOHC ボクサー】2010年 ■81kW (110ps)/7,750rpm ■120Nm/6,000rpm
  • 【SOHC ボクサー】2008年 ■77kW (105ps)/7,500rpm ■115Nm/5,750rpm
  • 【SOHC ボクサー】2004年 ■74kW (100ps)/7,000rpm ■115Nm/5,500rpm

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オーバーリッタークラスの2気筒エンジンにとって、DOHC の恩恵はそれほど大きくはないはず。数値だけを見ても、最高出力・最大トルクともに劇的な向上は見せていない。しかし低速域から高回転域まで淀みなく、軽やかに回るエンジン特性は、長距離移動やその道程でヒヤリとする瞬間を大幅に低減してくれるもので、それこそが BMW の望むところなのだろう。

出力向上に伴ってブレーキシステムもブラッシュアップ。前後ブレーキ・キャリパーのピストンはそれぞれ2mm 大径化、ブレーキラインも最適化されている。日本仕様では標準装備となっているこの前後連動(インテグラル)ABS はパーシャリータイプを採用しており、フロントブレーキ入力時はリアブレーキも作動し、リアブレーキ入力時はリアホイールにのみ働く。システム・オフ・スイッチも装備するので、悪天候下での走行やオフロードをアグレッシブに走りたい時など、チョイスはライダーの判断次第。またプレミアムラインには、走行中でもスイッチひとつでサスペンション設定の切り替えが可能な、GS (およびGSアドベンチャー)専用設定の Enduro ESA (電子調整式サスペンション)や、ホイールの空転を感知して点火タイミングを電子的に調整し、スリップダウンを抑制する ASC (オートマチック・スタビリティ・コントロール)も装備される。

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グリップヒーターやパニアケースの装備、ウィンドスクリーンの高いプロテクション効果など、ツーリング性能は従来通り非常に優れたもの。それでいてエンジン特性にさらなる研きがかけられているのが、DOHC を搭載した R1200GS の進化だ。

R1200GSの試乗インプレッション

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スパッと抜けた感のある
DOHC ボクサーツイン

外観そのものに大きな変更は見られないが、エンジン始動と同時に、これまでと明らかに違うことが判る。もともと迫力のある大排気量ボクサーツイン・エンジンの排気音がより太く、軽快にリズムを刻んでいるのだ。跨ってみると先代と何ら違和感は無く、相変わらず足つき性は乗る人を選ぶし、低い位置に重量物を置く安定感は、まさに BMW だ。

走り出しと同時に感じたのが「軽快」さ。ジンワリとクラッチを繋ぐと、乾式単板でありながら、エンストや手応えの強いクラッチミートに緊張感を伴うこと無く滑らかに発進する。初代 R1200GS から2代目へとフェイスリフトした時も、エンジンのフィーリングはよりスムーズに、洗練されたと感じたものだが、今回はさらにそれを上回る。いったいどこまで進化を続けるのだろう…。

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シンプルに考えてみると、1200(1170cc)ボクサーは1気筒あたり容積 585cc もある。そのシリンダーの中で大きなピストンが運動し、クランクをグルングルンと回している。あくまでもイメージであって実際はそんなノンキなものではないが、それが「国産マルチのようにシャキシャキと軽く回る」と言っても過言ではないと思う。ボクサー・エンジンの「おおらか」な特性に惚れているファンにとってはちょっと抵抗があるかもしれないが、ボクサーらしさが薄れていることはなく、むしろ低速域での扱い易さが大きなアドバンテージとなっている。跨った状態で小回りを要する場合や、発進と停止を繰り返すシチュエーションでは安心感が増し、そんなところに「進化」の度合いを感じてしまう。

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市街地と高速道路をクルーズした印象では、よく動くサスペンションの下で、軽快なエンジンが前後タイヤを繋いで一枚の板のように路面を追従し、その上にソファを置いてどっかりと座り、それでいてコントローラブル、と言った印象だ。DOHC エンジン搭載の R1200GS は、そのエンジンを軸とした各部構成パーツの最適化、ブラッシュアップによって、走りそのものがとても柔軟性を増しているように感じる。

こんな方にオススメ

GS のボーダーレスなイメージを抱きつつ
日常のパートナーとしてガンガン走るライダーへ

もはや GS がオンロード8割、オフロード2割の長距離ツーリングに最適なマシンだ、と言うことに異論を唱える者はいないだろう。先代のフェイスリフトを見ても、GS はそのメインフィールドをアドベンチャーに譲り、よりオンロード指向になっている。そろそろ GS を『ビッグ・オフ』と言う呪縛から解き放ち、『オールラウンド・ツアラー』と呼んであげよう。

最初から未舗装路なんて走りたくもないし見たくもない、というボクサー・エンジン好きのライダーには RT がある。しかし RT はあくまでもオンロード・ツアラーであって、オールラウンダーではない。実際の使用用途はどうであれ、その違いは非常に大きい。

シティ・ユースがメインで、たまにキャンプツーリングへ行き、自然を背景に「自分のバイクが世界で一番カッコイイ…」と、酒を片手に酔いしれたい。そんなイメージを抱き、とりわけ BMW に乗るのは初めて、と言う方にこそオススメしたい。DOHC ボクサーを搭載することでさらに扱い易くなった GS は、他メーカーと比較してこそ「比較にならない」と、気付くものなのだ。

R1200GS プロフェッショナル・コメント

迫力の増したサウンドで
ワクワク度も格別です

先代モデルと比較してみますと、まず始動した瞬間にマフラーから奏でられるサウンドが力を増しており、重みのある深いサウンドになっています。アクセルを回せばその力強さが伝わってきて、走り出す前からワクワクするところが良いですね。実際に走ってみれば、下からモリモリと湧き出るような力強いトルク感を味わえるので、これまでの GS をご存知の方でしたら瞬時に「違う」、「扱い易い」と感じることが出来ると思います。走行中も今までの BMW Motorrad で経験した事の無いサウンドが体に響いてきますので、アクセルを開けるのが楽しくなります。ですがライダーによっては、そのサウンド故に高速道路等での長時間一定速度巡航時に「ボーッ」と響き続ける排気音が疲労に繋がるのでは? という懸念も若干あります。

私が乗ってみた印象では、プレミアムラインに装着の ESA は高速道路走行時に「Sport」モードにすると、ツーリングでの快適さが増すようです。また、DOHCのボクサー・エンジンとなって、最大トルクを発生する 6,000 回転付近まで気持ちよく吹け上がりますので、車体的には前モデルと大きな違いは無いのですが、心を躍動させてくれるワクワク度では、正直言って格段上です。オフロードはまだ走行していませんが、きっとこのトルク感でワクワクする事間違いなしでしょう!(Plats Ehime 仙波 博さん)

取材協力
Plats Ehime
住所/愛媛県松山市大可賀1丁目4-11
電話/089-953-3487
営業時間/9:30-18:30
定休日/火曜日、第1・第3水曜日

R1200GS の詳細写真

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パッと見では先代との大きな変更箇所はほとんど見られない。カラーバリエーションは写真のアルピンホワイトのほか、オストラグレーメタリックマット、サファイアブラックメタリック、マグマレッドの4タイプ。
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DOHC(ツインカム)エンジンとなってシリンダヘッドカバーも一新。インジェクション・スロットルボディの色はシルバーからブラックに、インテークマニホールドのサイズも若干大径化されている。先代との比較はここを見るのが一番判り易い。
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サスペンション・ストローク190mmの足長バイクでも、相変わらず軽快なハンドリングを見せてくれる BMW Motorrad テレレバー。
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Premium Line(223万1,500円)にはエンデューロ ESA (Electronic Suspension Adjustment:電子調整式サスペンション)が標準装備される。
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日本仕様では標準装備の ABS (パーシャリータイプ)。シチュエーションに応じて、手元のスイッチでオン/オフの切り替えが可能。
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ホイール形状は2008年以降モデルと同様の星型シングルスポーク・デザイン。工場オプションでクロススポーク・ホイールも用意される。
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ウィンドシールドの高さ調整用ネジが使いやすい形状に。やはり、細かい部分で少しずつ改良が加えられている様子。
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左グリップ。ハイビームやホーン、左右振り分け式ウィンカースイッチのほか、「ESA」、「INFO」、「ASC/ABS」スイッチが並ぶ。
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右グリップ。セル/キル、右ウィンカー、ウィンカーキャンセル、2段階に調整可能なグリップヒーター(日本仕様標準装備)などのスイッチが並ぶ。ブレーキのリザーブタンクは半透明だった材質から透明(K1300シリーズ同様)なものに。中には内蓋ではなくスポンジが入る。
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速度/回転計は視認性の良いアナログタイプ。パネルはグレーからブラックに変更されている。さらにレッドゾーンの回転数が 8,000 → 8,500 へ、最高回転数が 9,500 → 10,000 へとアップ。右下のインフォメーション・ディスプレイには様々な情報が表示され、左グリップの「INFO」スイッチで表示切替が可能。ちなみに燃料残量と油温のインジケーター位置は左右逆になった。
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いたってシンプルな構造の2段階に高さ調整可能なシート(ライダー側のみ)。
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シートを外してみると、ライダーのほぼ真下(やや前方気味)にリア・サスペンションがセットされている。フレームの幅も相当絞られており、足つき性の向上に貢献しているのがわかる。
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テールランプもウィンカーも LED を採用(日本仕様標準装備)。
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エキゾーストラインに追加装備されたバタフライバルブ。アクセル開度と連動して騒音規制をクリアしつつ最適なトルクを発揮するよう作動する。
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先代と比較して明らかに迫力が増した排気音を奏でるサイレンサー。不快な空気振動ではなく“乗っている感”が増して逆に心地良い。
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長くモデルチェンジの変遷を見てきても、このステップは変わらない。ライダー側は取り外し可能なシンプルな形状。パッセンジャー側は幅広中空の低振動タイプ。
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初代 R1200GS から、リアフェンダーやサスペンションのカバーなど、もう少し汚れが飛散しないよう対策してほしいところ。
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特に大きな意味があるとは思えないが、ブレーキラインの一部パーツが淡いブルーに着色されている。ちょっと気になったポイント。
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