VIRGIN BMW | F650ST(1996-) BMWバイク中古車ガイド

F650ST(1996-)

  • 掲載日/2009年09月30日【BMWバイク中古車ガイド】

F650STの歴史など

F650STの画像

短命に終わった稀少モデル
シングルエンジン搭載のF650ST

F650STは、1994年に発売されたF650ファンデューロをベースとして造られたオンロードモデルです。発売前の想像ではバリバリの単気筒オンロードモデルを期待していましたが、実際はそうではなかったのでがっかりした記憶があります。そもそもF650ファンデューロがオン・オフ両刀使いのモデルだったため、STの存在意義がそれほど強くはなく、1996年末の発売から1998年までの3年弱で姿を消してしまいました。

STの販売価格は88万円。日本へはキャタライザー付きモデルのみ輸入されていました。この頃のF650シリーズには、まだABSは設定されていません。F650ファンデューロも同様ですが、STはイタリアのアプリリア社で生産されていました。ただし、品質はドイツ国内生産のモデルと遜色ありません。ウィンカーやスイッチなどの部品は、その当時のモトグッチやドゥカティなどと同じデザインのものが使われていました。

メーカー生産台数は1万3400台ほどで、日本での販売数も決して多い部類ではありません。中古車を探そうとすると、R80GSベーシック並に困難と思われるレアなモデルです。いつでもSTという名称のモデルは数奇な道をたどるようです(R80STのことです、R1200STやF800STのことではありませんのでお間違えの無いように)。

F650STの特徴

F650STの画像

元気なシングルエンジンと
ロードスポーツの足回り

F650STは、先に販売されたF650ファンデューロの兄弟車となります。エンジン、フレーム、フロントサスペンション、駆動方法、車体外装のほとんどが共通の構成となっています。異なる部分はフロントのタイヤサイズ、ハンドルバー、年式によってメーターの一部、リアサスペンション等です。

搭載されているエンジンはロータックス社製で、当時アプリリアのペガソというモデルに搭載されていたものとほぼ同じです。ただし、ヘッド部分の構成は“Mシリーズ”(4輪BMW)からのノウハウが注ぎ込まれたBMWオリジナルです。この水冷単気筒652ccDOHCエンジンには、低・中回転域用と高回転域用の2キャブ方法が採用されています。

トランスミッションは5速タイプで、中速から高速域では快適ながら、低速域ではエンジンの性格とギア比が上手く合わず、多少乗りにくかった記憶があります。ただし、ハイパワーな単気筒エンジンだと思えば辛いほどではありません。

フロントフォークには一般的なテレスコピックタイプが装備され、ブレーキは300mmのシングルディスクに片押しタイプのブレーキキャリパーの組み合わせとなっています。リアサスペンションはリンクを介したモノサスで、駆動方法はチェーンドライブを採用しています。車輌価格と想定される乗り手からすると、妥当な選択だったと思われます。ガソリンタンクは樹脂製インナータイプ18リットルで、ハンドルとライダーの間、いわゆる通常の位置にあります。

このモデルにも大小2種類のサイドバッグの設定があります。ただし、大型を装着するととてつもなく横へ張り出すので、シティケースと呼ばれる小型を装着するのが一般的でした。

F650STの画像

シンプルなコックピット

当時イタリア車にも使用されていたものと同型のメーターやハンドルスイッチ。
F650STの画像

小柄なスクリーン

ST標準のスクリーンはこんなに小型なものでした。オプションで大型もアリ。
F650STの画像

オイルタンクはフレーム内に

クランクケースにエンジンオイルを貯めないドライサンプ式を採用。

当時のカタログを見てみよう!

市街地から田園地帯のワインディングまで
万人向けのBMWバイクとして登場

F650STの画像
F650STの画像

中古車選びの注意点

F650STの画像

注意点はF650ファンデューロと同様
耐久性に優れたタフなモデル

10年以上も経過するモデルです。この中古車を探すのであれば、それほど状態の良いものが残っているとは思わない方が良いでしょう。車輌の使われ方として、観賞用と言うよりはツーリング、それに日頃の足としても十分使用できるものなので、その分劣化や摩耗が進んでいるものが多いようです。「特にここだけを注意すれば良い」というものとは異なりますので、程度の見極めは難しいところです。ドライブチェーンと前後スプロケット、前後ブレーキディスクなどの摩耗や、シートの経年劣化による変質、ステアリングヘッドベアリングの劣化等は、外見や操作である程度判断が付きます。このSTは兄弟車であるF650ファンデューロとほぼ同じ車体構成なので、特に注意を要する箇所についてはF650ファンデューロをご参照下さい。

購入の際の注意点
  • ● STやファンデューロの補修部品の多くは、日本在庫をしていないため他モデルより日数がかかります。
  • ● ガソリンタンクキャップは比較的雨水が浸入しやすい構造なので、樹脂製タンクの中に水が溜まることがあります。
  • ● エンジンは驚くほど丈夫で、レースでもしない限り特にメンテナンスを施す必要はありません。
  • ● ファンデューロでも紹介したように、一部の電装品がとても高価なので、故障の際は覚悟が必要です。
プロフィール
山本 栄治

1960年生まれ、91年式R100GSパリダカール所有。1983年に福田モーター商会に入社して以来、BMWに携わり続けている。毎年100台以上のBMWの下取り査定や中古車販売に携わっていて経験豊富。

取材協力
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電話/03-3468-6841

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