再びオフロード性能を強化した「R1200GS(2008)」
- 掲載日/2008年12月05日【GSナビ】
R1200GS(2008)
14年間、進化し続けてきた
GSの最新バージョン
R1100GSが1994年に登場して以来、ビッグオフというカテゴリーのトップに君臨し続けてきたGS。この間、ライバルと目される他社製バイクが多数登場したが、結局のところGSに追いついたバイクは皆無だったということに異論を差し挟む余地はない。確かに、1100がデビューした当時はライバルが不在だったこともあり、環境が有利に働いたというこもあるかもしれない。しかし、近年では状況が大きく異なる。GSの追撃をもくろむモデルは多数存在しているのだ。それにもかかわらず、トップの座を一度も明け渡すことがなかったばかりか、GSと「それ以外」の差はかえって拡大してしまったかのような感がある。
その印象を決定的なものとしてしまったのが、今回ご紹介する2008年に発表されたR1200GSだ。2004年デビューの先代モデルと車名がまったく同一であるため、やや新鮮味に欠ける印象があるのは否めないが、このモデルチェンジが安直なフェイスリフトではないことは明白だ。外観上の変化は、シート、フロントフェンダー、フロントフォーク、タンク、テールライト、ブレーキライトの違いに気づく程度。ほぼ丸まると言ってよいほど先代のデザインを継承し、外観上の変化が驚くほど抑えられている。
一方、その走りを左右する本質的な部分の変更は想像以上にドラスティックだ。エンジンはわずか5馬力ほどだが出力が向上し、ミッションは全面的に改良が施されている。また、メーカーオプションとしてエンデューロESA、エンデューロASCが搭載可能となったことなどが大きなトピックスだ。これを多いと見るのか少ないと見るのかは人によって異なるだろうが、2008年のモデルチェンジでGSの万能性がさらに強化されたのは事実である。
エンジンと駆動系は全面改良
エンデューロESA/ASCにも注目
数値的にはわずか5馬力の出力向上でしかないが、実はこのモデルとなってエンジンそのものが変更されている。R1100GSの登場以来、GS系はロードスター系モデルとエンジンを共通化し、その他のモデルとは違うパワーユニットを搭載するのがこれまでの伝統だった。
しかし、このR1200GSでは細部の仕様やチューニングこそ異なるものの、R1200RTなどの純粋なオンロードモデルと共通のエンジンを搭載している。これにより、エンジンのキャラクターはやや高回転型となり、最高出力は500回転、最高トルクは250回転ほど高い回転数で発生。それぞれ7500rpm、5750rpmとなっている。さらに、トランスミッションも全面改良され、ファイナルのギアレシオも変更。エンジンのみならず、トランスミッションを含む駆動系は全て先代とは別物なのだ。
フル装備状態のR1200G。ツーリングトリムがこれほど似合うバイクはそう多くはない。
また、これらはすべて、エンジンの変更に合わせてややローギアードなレシオが与えられたR1200GSの専用品で、高回転型になったエンジンとの組み合わせであるにもかかわらず、燃費は若干向上。状況に応じてレギュラーガソリンも使用可能とされており、エンジンのチューニングやマネジメントもかなり進化ししていることが分かる。そのほか、電装系の強化やアクセサリーの使用を考慮して、オルタネーターは720ワットに強化されている。
さらに、このGSの進化で大きな役割を果しているのが、工場オプションのエンデューロESA/ASCだ。エンデューロESAは従来型の進化版で、プリロードはこれまでの3モードに加え、フラットダート、ハードダートの2モードを追加。ダンパーは、従来通りのコンフォート、ノーマル、スポーツの3種類だが、組み合わせることでオフロード用のセッティング6パターンが追加されたことになる。エンデューロASCも従来型をバージョンアップしたものだ。オフロードをカバーする特性を考慮され、オン・オフ問わずリアタイヤの空転をセンサーが感知し、それを効果的に抑制する。
歴代最高の万能性を誇る
最新・最強のオールラウンダー
R1200GSで走り出すと、より逞しくなったエンジンの恩恵を実感するだろう。そのフィーリングに大きな変化は感じられないのだが、歴代モデルの極低回転域でかすかに感じられた低速トルクの不足感が完全に払拭されている。エンジン自体はやや高回転型になっているが、新開発の駆動系とのマッチングが良いのか、したたかな粘りを感じるのだ。この変化は発進時だけではなく、全域に渡って感じられ、トルクが一枚上乗せされた感覚がある。市街地や高速道路、ワインディングなど、あらゆる路面で発揮される俊足ぶりにも磨きがかかっており、やはりGSの進化はオンロード性能重視であることがうかがえる。
オンロード性能の強化は新世代GSの宿命。新型R1200GSでも、それは貫かれている。
しかし、このR1200GSでファンを最も喜ばせたのは、オフロード性能が同時に強化されていたことではないだろうか。これをもたらした主役は紛れもないエンデューロESA/ASCだ。テレレバーを採用してきた歴代モデルでは、オフロード走行でフロントサスペンションに扱いにくさを感じることがあった。しかし、このR1200GSではエンデューロESAを調整することで、瞬時にオフロード向きの前足へと変化させることができるのだ。ダンパーは好みの問題もあるが、ソフトなセッティングを選択すると不整地での路面追従性が向上し、従来のテレレバー車には希薄だった、フロントフォークのストロークを積極的にコントロールできる感覚も生まれる。
また、オフロード用のプリロード設定を選択することで車高は最大で20ミリアップし、走破性自体も高くなる。これにタイヤの空転を制御するエンデューロASCが装備されているのだから、ビッグオフの装備としてはこれ以上望むべくもないという感じだ。
これまでGSの進化はオンロード性能の強化に軸足がおかれてきたことは明らかであり、これからもそれが変わることはないだろう。しかし、このR1200GSでは明確にオフロード性能が補強されたことは注目に値する。もはや多目的バイクと呼ぶにふさわしい万能性を得てしまったGSは、今後もこのカテゴリのベンチマークとして君臨しつづけるに違いない。
R1200GS (2008) の特徴
GS独特のデザインは先代からほぼそのまま継承
GSのアイコンとも言える左右非対称のライトユニットをはじめとして、基本的なデザインは継承。フェンダーの形状はやや変更された。
より自然なポジションを目指してハンドルクランプを変更
先代との比較で、ポジションが改善されたことを実感するオーナーが多い。そのひとつの要因がこのハンドルクランプの形状変更だ。
ステンレスの質感を活かして高級感を演出したタンクまわり
シュラウド風のタンク前端にはステンレスの質感を活かしたプレートが追加され、高級感アップとともに新型であることをアピール。
LEDタイプが採用されたテール/ブレーキライト
このモデルからテール/ブレーキライトはLEDタイプが採用され、明るい時間帯の被視認性も大幅に向上。ウインカーはクリアレンズとなった。
エンジンは改良ではなくユニットごと変更
エンジンは先代の改良・熟成版ではなく全面的に変更。従来の122EDから、R1200RTなどと共通の122EF型へとユニット自体が変更された。
オフロード性能強化の鍵 エンデューロESA
合計15パターンのサスペンション・セッティングが選べるエンデューロESA。オフロード走るユーザーには強くお勧めしたいオプション。